"地球生命の基本単位である細胞には原核細胞と真核細胞がある。原核細胞はDNA、タンパク質等の生体分子が単一の膜に包まれた構造を持ち、単細胞生物として環境で生き残ることに特化されている。真核細胞はDNA を保持する核、エネルギー生産を担うミトコンドリア、糖鎖など複雑な分子の工場であるゴルジ体等のオルガネラ(細胞小器官)を持つ。オルガネラは原核細胞の細胞内共生を起源とするとされ、二層の膜による入れ子構造を持つ。多細胞生物において様々な組織に分化する高度な機能を実現している。本研究の目的は、真核細胞において合成生物学的な遺伝子回路の組換え技術によって、オルガネラを用いた機能実現の方法『オルガネラ計算』を提案し、数理解析とシミュレーションによってその計算能力を明らかにすることにある。 今年度は、実際の細胞中のミトコンドリアの遺伝子組み換えが技術的に困難であることから、生体分子DNAの熱力学的特性を利用して機能性ナノマシンを構築した。また、計算機のLinuxオペレーティングシステム上で直接動作し、進化する人工生命プログラムを開発した。
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