研究課題/領域番号 |
25540099
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
長尾 智晴 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (10180457)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 医用画像処理 / 覚醒下手術 / 画像認識 / 音声情報処理 / データマイニング / 自動インデクシング |
研究概要 |
本研究の目的は,覚醒下脳外科手術における執刀医の意思決定システム開発のための手術事象の解析とモデル化の手法を開発することである.研究代表者と協力関係にある東京女子医科大学先端生命医科学研究所(TWINS)の伊関教授・村垣教授らのグループによる全面的な支援を受けて,同グループによってこれまでに実施された数百例の覚醒下脳腫瘍摘出手術の記録映像を対象にして,熟練執刀医の検査処理手順を自動解析するための画像・音声情報処理技術の研究開発を行なっている.これまでに,手術記録動画像中で医師が患者の脳表面を電気刺激したときのタイミングと画像中の脳表面の電気刺激位置を自動検出する画像処理手法を開発した.これによって,これまで人手による検出に1手術当たり8時間程度を要していたが,数分以下でそれを達成することができるようになった.さらに,脳表面を撮影したカメラ角度や手術の進行度が異なる複数のシーン中で刺激位置を2次元的に対応させる実験を行なって有効性を確認した.また,手術時に録音された音声データから,電気刺激時に装置から発生する非常に小さい電子音を検出して刺激タイミングを検出する音声情報処理方式を開発した.これにより,動画像処理と合わせて実行することで,検出精度と信頼性を高めることができた.今後は電気刺激の位置を3次元MRI画像へマッピングすることや,患者の回答音声からストレス解析を行うこと,並びに執刀医と患者のモデルを構築することなどを行なう予定である.このように,本研究は当初の予定通り順調に進んでいると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,当初予定していた研究計画に沿って順調に研究を進めることができていると考えている.医師が電気刺激した脳表面上の位置を検出する処理などに関する本研究の研究成果は,平成25年度に4つの査読付き国際会議(IWCIA2013に2編,MICCAI2013に2編)に正論文が採択され,学会でも高い評価を受けることができた.特に,IWCIA2013では,論文の筆頭著者である当研究室所属学生がIEEE(米国電気電子学会)からIEEE SMC Hiroshima Chapter Best Presentation Awardを受賞することができた. 本研究の計画当初に平成25年度に行う研究内容として,①医師による患者の脳表面上の電気刺激のタイミングと位置を検出する,②それを複数の手法を併用することで信頼性を向上させる,③脳表面での刺激位置と別の画像での脳表面並びにMRI画像での対応関係を求める,④患者の応答に対する音声情報処理によって正解/不正解,応答速度,躊躇の度合いなどを検出することを予定していた.これらに対する達成度の自己評価は,①と②は120%(期待以上の成果を残すことができた),③は80%(MRI画像との対応付けが未達成である),④が80%(患者の正解/不正解の判定が未達成である)と考えている.なお,③と④の未達成部分には既に着手しており,平成26年度の早い時期に達成可能であると考えている. 以上により,本研究の達成度は概ね90%程度であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究は順調に進んでおり,今後も予定通り研究が実施できるものと考えている.まず平成25年度に実施予定であった研究内容については,特に実施に当たって大きな問題はないと考えており,平成26年度の早い段階に達成することができると考えている. 次に平成26年度に実施予定の研究内容である,①執刀医の意思決定モデルの構築,②患者の精神状態・疲労度・病態の変化モデルの構築,については次のような推進方策を考えている.まず①については,医師による電気刺激の位置検出の実験結果の事例を増やすことによって,医師の電気刺激手順の定型パターンの導出を試みることで達成することができると考えている.次に,②については,これまで扱ってこなかった患者の発生した音声の自然言語解析処理を実施し,医師に提示されたタスク(問題)に対して正しく回答しているか否かを検出する.さらに,音声情報処理によって回答に要した時間を求め,自然言語解析によって求めた発声文章の正しさの情報から,患者の疲労度及びストレスを検出することができると考えている.最後に,執刀医及び患者の意思決定・応答モデルを作り,その有効性を検証する予定である.平成26年度の後半に行う研究内容には,情報工学の分野において非常に難しいと考えられているテーマも含まれているが,本研究によって何等かの有益な知見を得ることができるよう努力したいと考えている. 平成26年度は本研究の最終年度でもあるため,研究成果が出た時点で,国内学会・国際会議・学会論文誌などを通して,研究成果を社会に早期に還元したいと考えている.
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