最も基本的な非線形微分方程式の解であるq-指数関数は,その非線形性とシンプルさゆえに,自己相似性をもつ.その自己相似性から連分数の構造が存在するが,本研究の目的である,その数理構造については,論文発表に至っていない.当初,予想していた構造と違うことがわかったためであり,未完成である.しかし,その過程で,一般化二項分布を発見した.二項分布の一般化は,すでにいくつも知られているが,そのなかでも,本研究で発見した二項分布からq-ダイバージェンスと言われるKLダーバージェンスの一般化が導かれる点である.これは大偏差原理のべき分布関数族への一般化が存在することを示唆する非常に重要な結果である.また,q-ダイバージェンスは,古くは学習機械の分野や情報幾何の分野で知られていたα-ダイバージェンスとほぼ等価であることがわかっている.このような重要な特徴を持つ一般化二項分布の特別な場合として,一般化ベルヌーイ分布が導かれる.これは,全ての確率分布の基礎となる分布であるが,ここでいう一般化ベルヌーイ分布とは,従来の指数関数族の一般化としてのべき分布関数族におけるベルヌーイ分布である.その意味で,この一般化ベルヌーイ分布を用いれば,べき分布関数族における確率分布とそれらの相互関係を解明できると思われる.このような本研究の発見に基づいて,今後の研究の展開としては,べき分布関数族に属する確率構造を解明し,その情報構造,特に,自然界に頻出するべき分布の背後にある全く新しい符号構造を明らかにしていきたいと考えている.
|