最終年度の研究成果について,サブテーマごとに以下に示す. (A)高速ビジョンによる幾何情報・力学情報の同時センシング手法の確立 (A-1)3次元形状復元:前年度に提案した3次元形状の復元手法とボクセル空間でのシミュレーションに引き続き,今年度は実機システムへ実装して実画像を用いた実験をおこなった.直方体と桝形ブロックの2種類の対象を回転させて3次元形状の復元をおこなったところ,復元後のボクセル数の平均誤差は18%程度となった.誤差の原因は,提案手法が対象時系列画像の輪郭情報を利用する手法であるため,輪郭の陰影に影響を受けやすいためである.実験結果より,角速度ベクトルの推定精度が3 次元形状の復元精度に大きく影響することが判明した.(A-2)力学パラメータ同定:主慣性モーメントの二乗誤差の最小化に基づき,対象の質量分布を推定する手法を提案した.この手法は,剛体内に空洞がなく充填しているという制約条件と,最適解の一意性および質量分布の断続変化抑制を表現する正則化項を追加することで,凸二次計画問題として定式化されている.シミュレーションでは,非一様な質量分布を持つ立方体・直方体・桝形ブロックの3種類の対象に対しておこなった結果,質量変化の大きい部分では真値からの偏差が大きくなるが,特異な値に収束することなく真の質量と同じ傾向の分布を推定することができた. (B)高速多指ハンドによる能動的操り手法の開発 対象の力学情報を計測するために,対象を能動的に動かすことで運動特性を内包した多視点の時系列画像を取得することに着目し,ハンドを用いて対象に回転を与える操り軌道計画と,回転数に関する制御パラメータ空間での主要因解析をおこなった.検証実験として,ハンドアームによる投球タスクに提案手法を実装し,空中における対象の回転運動の制御を実現した.
|