本研究の目的は、植物の生長高速化や高密度配置化を目指した植物ロボット化研究の取り組みを通して、感覚行動系の発達と初期的社会性の創発可能性を探る事であった。 当初の計画では、ロボット化された植物を複数台を用いた実験を行い、社会性と解釈できる振る舞いが見られるかを観察することとしていたが、研究の進展に伴い、心理学的知見や経済学的知見との関連性に関しても、様々な示唆が得られそうであることがわかり、新規な情報を得ようとする好奇心の研究や、比較経済学に基づく異者間の協力などについての研究も進展した。 平成26年度は、ロボット化された植物が自律的に他者を避けたり障害物を避けたりする行動ができるようにすべく、従来の明るさセンサ(太陽電池パネル)のみならずレーザ距離計を搭載し、他者を回避しつつ光を受けられる方向に移動することができることを確認した。 また、感覚に基づく行動の原理の例として、自分が経験したことの無い感覚情報を得たいという行動指向性(好奇心)を、感覚行動系のロボットに持たせる方法を検討し、提案したアルゴリズムに基づき、ランダムに行動を選ぶよりも早く、新規な感覚情報を得られることを、実験的に検証した。 さらに、各エージェントの得手不得手を相対化する比較経済学の理論に基づき、いずれの行動の遂行能率も劣っているエージェントでも比較優位であるような行動を選択するというような、行動選択の原理を検討し、シミュレーションにより実験を行い、その効果を確認した。 これらの研究成果は、査読付き国際会議論文や、招待講演として発表し、査読付雑誌論文にも採択・掲載された。
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