研究課題/領域番号 |
25540119
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山田 光宏 茨城大学, 工学部, 講師 (10272113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感性評価 / 1/fゆらぎ / カオス性 / ヒューマンアニメーション / 歩行 |
研究概要 |
1 カオス的な1/fゆらぎとカオス的でない1/fゆらぎの感性評価による比較検討 ヒューマンアニメーションの制作に必要なモーションキャプチャのプログラムを開発し,Microsoft社のKinectを用いた低コストなモーションキャプチャのシステムを構築した.構築したシステムにより,比較的複雑な全身での動作となる歩行について,1周期の動作における身体の各部位の時系列データを取得した.取得した時系列データおよび1/fゆらぎを用いた繰り返し動作のヒューマンアニメーションの制作手法を考案し,カオス的な1/fゆらぎを用いた場合(AC)とカオス的でない1/fゆらぎを用いた場合(AN)の,単一のキャラクタによる歩行のヒューマンアニメーションを制作した.ACとANにおけるキャラクタの動作のリアルさについて,感性評価実験による心理的評価に関する比較検討を行った.得られた評価に対して,因子分析と評価の有意差の有無に関する検定を行なった結果,ACに比較してANのほうが,より動作がリアルであった.本研究結果については,国内学会において口頭発表した. 2 従来手法より正確なスペクトルのカオス的な1/fゆらぎの新たな発生手法の開発 1次元変形ベルヌーイ写像により発生させたカオス的な1/fゆらぎの時系列を,カットオフ周波数fcの低域ディジタルフィルタに通した後,間引きにより標本化周波数を2fcとすることにより,より正確な1/f型スペクトルを有するカオス的な1/fゆらぎを得た.得られた1/fゆらぎに相関次元推定法を用いた検定を適用し,カオス性を有することを確認した.fcを低くするとパワースペクトルはより直線的になったが,低域ディジタルフィルタによる波形の変化がより大きくなったことから,パワースペクトルの直線性と波形の変化はトレードオフの関係にあることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1 カオス的な1/fゆらぎとカオス的でない1/fゆらぎの感性評価による比較検討 当初の計画においては,平成25年度では,比較的実現が容易と考えられる上半身のみの動作のモーションキャプチャのシステム構築と,それを用いた上半身のみの拍手の動作に関する研究を予定した.しかしながら,モーションキャプチャのシステム構築が当初の想定以上に進み,全身の動作のモーションキャプチャが可能なシステムを構築した.また,モーションキャプチャを用いない研究ではあるが,拍手の動作に関する本研究代表者らによる先行研究論文が平成25年度に学術誌に掲載された.このため,より新規性の高い歩行の動作に関する研究を進めた.歩行に関しては,計画では平成26年度に実施する予定であり,それを平成25年度に実施したため,本項目については当初の計画以上に進展していると評価する. 2 従来手法より正確なスペクトルのカオス的な1/fゆらぎの新たな発生手法の開発 当初の計画においては,1次元変形ベルヌーイ写像によるカオス的な1/fゆらぎを用いてセルラーオートマトンを動作させることにより,正確な1/f型スペクトルとなるカオス的な1/fゆらぎを得る予定であった。しかしながら,先行研究により,定常状態と非定常状態を繰り返す間欠性が感性評価に影響することがわかり,そのような間欠性が得られない当初計画の手法は適切でないと判断した.このため,1次元変形ベルヌーイ写像により発生させたカオス的な1/fゆらぎの時系列を,低域ディジタルフィルタに通した後,間引きする手法に変更した.変更した手法により,より正確な1/f型スペクトルおよび間欠性を有するカオス的な1/fゆらぎが得られることを確認したため,本項目については,研究の目的を達成していると評価する。 上記の1と2に基づき,全体として,当初の計画以上に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
1 カオス的な1/fゆらぎとカオス的でない1/fゆらぎの感性評価による比較検討 実際のヒューマンアニメーションに近い,複数のキャラクタを用いた歩行のヒューマンアニメーションに関して,カオス的でない1/fゆらぎの有効性を確認する.そのために,カオス的でない1/fゆらぎを用いた場合と,1/fゆらぎを用いない場合のヒューマンアニメーションを制作し,感性評価実験による比較検討を行う. 2 従来手法より正確なスペクトルのカオス的な1/fゆらぎの新たな発生手法の開発 前年度に引き続き,低域ディジタルフィルタのカットオフ周波数fcを変化させつつ数値計算を繰り返し,適切なfcの値を明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費および旅費が当初予定よりも若干安価で済み,端数の次年度使用額が生じた. 研究発表のための旅費に加える計画である.
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