研究課題/領域番号 |
25540124
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 圭二郎 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303850)
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研究分担者 |
吉村 晶子 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (50356052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 景観 / fMRI / 脳共賦活メカニズム / 情動 / 画像認識 / 視線解析 / 脳神経科学 |
研究概要 |
本年度は、人が景観からどのような情報を読み取り、また何に関わりを持つときに「快/不快」等の情動が喚起されるのかを明らかにし、景観の知覚・認知から認識・評価に至る機構を探る手がかりを得ることを目的とし、「景観」を題材に、A-1.「fMRIを用いた脳の共賦活メカニズム」に関する実験解析、及び、A-2.アイマークレコーダを用いた視線走査・注視傾向の解析を行った。 A-1.では、fMRI信号の解析の結果、視覚情報伝達経路について腹側視覚経路と背側視覚経路に活動が見られたが、景観画像の提示では特に背側視覚経路がより活動しており、ヒトが景観を見た際、奥行きや空間情報、身体定位が重視されていると推察された。緩い検定では、快画像において空間視経路の最終段階である上頭頂小葉を中心に賦活が見られ、触覚的・運動感覚的知覚を含む空間知覚と身体定位が推察された。不快画像の提示では小脳や海馬の活動が見られ、記憶との関連が示唆された。さらに、日本の伝統的家屋等を認識した際に楔前部に賦活が見られ、アンケートとfMRIの結果に負の相関があったことから、楔前部は単に景観の快不快ではなく、その構成要素と配置の客観的判断に関連すると推察された。 A-2.では、同じ景観画像群を用い、アイマークレコーダによる視線走査・注視傾向の解析を行った。視線走査は、景観画像群の快/不快に関わらず、第一に奥行き方向への走査(往復)、次にスカイライン等空間輪郭をなぞる形での走査が顕著であった。特定の快/不快要素に注視傾向(視線滞留時間)が偏ることはなく、視線走査速度には快/不快間に若干の差異が認められたが、有意差は無かった。 以上、視線走査・注視傾向と快/不快を誘発する要素との関連性は認められなかったものの、fMRI信号解析では、景観に対する情動反応と脳賦活領域との関連性が認められ、景観認識の機構を探る手がかりに関する重要な示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画の通り、fMRIを用いた脳の『共賦活メカニズム』に関する実験解析、及び、アイマークレコーダを用いた視線走査・注視傾向の解析を進めることができた。なお、実験においては景観画像群だけではなく、その比較対象として、フロリダ大学提供の感情を誘発する国際的指標とされている画像セット(International Affective Picture System; IAPS)から一部抜粋した画像群を用いたfMRI実験・解析も併せて行い、解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度も当初研究実施計画の通り、研究を鋭意遂行する。平成25年度の実験は、実験環境(MR装置)の制約上、提示画像の視野角約12°であり、実際に景観を見る感覚とはかなり異なる実験条件となっていた。このため、同じ景観画像群を用いた別の実験環境下でのfMRI実験を既に行い、ここでは画角約30°の条件で景観画像の提示を行っている。今後は、この実験結果の解析を進めつつ、fNIRSによる実験やアイマークレコーダによる実験結果等との比較を行い、景観認識におけるヒューマンパフォーマンスモデルの理論的枠組みの検討を行う予定である。
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