3年間で自閉症児の快感情を定量的に測定する研究を動物介在活動およびロボット介在活動を題材として実施した。動物介在活動中の自閉症児の快感情生起を定量的に測定することに成功し、自閉症児の笑顔量とpositive な社会的行動量の間に関連性があることを突き止めた。この成果を日本神経科学学会Neuro2013で発表し、また成果の一部をJournal of Autism and Developmental Disorders で公刊した。その後、自閉症児の笑顔と社会的行動の関係をさらに解析するため、動物介在活動とともに小型ヒト型ロボットを導入し、自閉症児の感情や行動および意思に即興的に即応可能なロボットシステムを開発し、自閉症児の笑顔と社会的行動の関係についてより詳細な解析を進めた。さらに、自閉症児の笑顔生起と自閉症児が動物あるいはロボットの目を含めた顔部分を見る行動(アイコンタクト)が同期することを動物介在活動セッション中の所見から気づき、この現象をロボット介在活動中にロボットに装着したアイカメラで定量的に確かめることができた。この成果により、自閉症児は他者とのアイコンタクトを避ける傾向が一般的にあるという精神医学上の常識が実は固定的なものではなく、対象との社会的・ポジテイブな感情的な関係の有無によりかなりの自由度をもって変化しうる可能性を示唆した。最終年度の研究ではロボット介在活動で明らかにされた自閉症児の笑顔とface to face 行動の同期を、動物介在活動で起こっているかどうかを詳細に解析し、同様の結果を得た。この結果はNeuro2016で発表する。これらの成果は個々の自閉症児の快感情を重視したアプローチを導入した療育教育が彼らの社会的な行動をよりポジテイブな方向に促進しうることを示唆しているので、特別支援教育の現場で実践応用の意義が大いにあると考えられる。
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