研究実績の概要 |
1)519 nm(緑色)に吸収波長を持つgreen-light absorbing proteorhodopsin(GPR)は、発色団近傍のL105を他のアミノ酸に変異すると広範囲に吸収波長が変化する。本研究では、この波長シフトの原因を、QM/MM構造最適化及び全原子量子化学計算(CIS計算)を用いて解析した。具体的には、タンパク質への結合に伴う発色団の幾何構造変化の効果、静電効果、内部水の効果等について調べた。その結果、Gluへの変異についてはよい再現性が得られたが、他のアミノ酸については今後の検討の余地を残す結果となった。 2)オプトジェネティクスのツールとして重要な位置を占めている光受容体フォトトロピンの機能部位であるLOVドメインについて以下の研究を行った。DNA結合ドメインHTH(helix-turn-helix)を持つ、光受容タンパク質LOV-HTHを対象とし、MDシミュレーション(以下cMD)と、拡張サンプリング法であるaccelerated MDシミュレーション(以下aMD)を行った。具体的には、dark state, light state, 変異体L120K, S137Yの4つの系に対しシミュレーションを実行した。Light stateでは、FMN-Cys75共有結合形成により近傍Gln138の揺らぎが増大し、その結果としてLOVドメインとHTHドメインを繋ぐAla118-Arg215, Ser137-Arg215水素結合が乖離することが判明した。また両変異体ではlight stateと同様、Ala118-Arg215, Ser137-Arg215水素結合が乖離した。さらに、両変異体では、LOVドメインと離れたArg215が近傍Asp212, Glu219とHTH内水素結合を形成し、その結果ドメイン境界に水分子が流入することが判明した。このHTH内水素結合は、LOVドメインのβ-sheetを介した発色団FMNからHTHドメインへの光応答経路において必須の役割をしていると推測された。一方、dark stateでは、Jα-helix N末端のArg152, Arg155が、HTHドメインAsp212と水素結合を形成し、ドメイン境界への水分子流入を防いでいることが判明した。
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