1) BLUFタンパク質の一種であるTePixDは、シアノバクテリアの走光性に関与し、フラビン化合物を発色団として持ち、最近オプトジェネティクス用の光受容体として利用されている。TePixDは暗所においてリング状の10量体構造を形成し、光照射によって5量体に分離する光応答反応が報告されている。しかし、原子レベルでの活性化メカニズムはまだ明確になっていない。本研究では、MDシミュレーションを用いることでTePixDの光応答反応のメカニズムを、暗所明所におけるタンパク質のダイナミクスの違いという観点から原子レベルで解析した。単量体のMDシミュレーションの結果から、発色団近傍に位置するGln50がケト型からエノール型へ異性化することが示唆された。明順応状態や変異体の3αや3α-4αループの部分に揺らぎが増大していることが判明し、発色団から1αを介する経路やGln50を介してβシートの裏側へエネルギーを伝達させる経路が示唆された。ついで、10量体のMDシミュレーションの解析結果から、明順応状態における単量体の上下間の協同的揺らぎが、暗順応状態における単量体の上下間より弱くなっていることが判明した。 2) 昨年度に引き続きLOVドメインの光応答機構を調べたが、特に、フォトトロピンAsLOV2とオーレオクロムLOVドメイン(AuLOV)の比較を行った。その結果、前者では吸収された光エネルギーが下流側に存在するJαヘリックスすに流れるが、後者では上流側のA'αヘリックスに光シグナルが伝わることが判明した。 3)チャネルロドプシンやプロテオロドプシンの光吸収制御機構に関しては、タンパク質の立体構造をMD計算からサンプリングするなどして、精度を高めた計算を続行中であり、最終結果を得るにはもう少し時間を要する。 4) 将来的に水和タンパク質の問題に適用できるの新規なQM/MM計算法を開発した。
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