研究課題/領域番号 |
25540135
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
葛 崎偉 山口大学, 教育学部, 教授 (30263750)
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研究分担者 |
中田 充 山口大学, 教育学部, 准教授 (60304466)
呉 靭 山口短期大学, 情報メディア学科, 講師 (70708015)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 五行説 / 五臓六腑 / 経絡 / ペトリネット / モデリング |
研究概要 |
東洋医学では,五臓とは肝,心,脾,肺,腎,六腑とは胆,小腸,胃,大腸,膀胱と三焦を指す.また,経絡とは人体の中の代謝物質の通り道を表す.平成25年度において,東洋医学の陰陽五行説に基づいて五臓六腑のペトリネットモデルを構築した. 五臓の制御モデルとして,Sunらは肝・心・脾・肺・腎という五臓の生理的平衡状態を定量的に定義し,五行説の基本理論に基づいたファジーモデルを提案している.Sunらは五臓の状態を弱,微弱,平衡,微強,強といった5つのレベルに分け,それぞれのレベルに対応する値域を定めている.我々はまず,ペトリネットを用いて,Sunらの制御モデルを基に臓の状態を定量的に表現できる臓の単体モデルを構築した. 五行説には臓の間に相生と相克の関係がある.相生の関係とは,相手を生み育てる母子関係のことであり,木→火→土→金→水の順に循環している.相克の関係とは,相手を抑制する関係のことであり,木→土→水→火→金の順に抑制する.我々は,この五臓の相生相克関係に基づいて,臓の単体モデルを結合して五臓のペトリネットモデルを構築した. さらに,臓と腑は互いに表裏(または陰陽)の関係にあり,肝は胆,心は小腸,脾は胃,肺は大腸,腎は膀胱,といったように,臓と腑が一対になって互いに助け合いながら生命を維持している.このような臓と腑の陰陽関係を分析した上で,臓と腑との協同関係のモデリングを行った. 以上で設計したモデルを結合して,五臓六腑全体のペトリネットモデルの構築ができた.最後に,五臓六腑と深い関わりがあり,経穴が最も少ない経絡の1つである心包経と五臓六腑とを融合したペトリネットモデルも提示することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東洋医学において,人体は五臓六腑を中心に,経絡・組織・器官などが密接につながり合うようになっていると言われている.本研究のねらいは,五臓六腑や複雑に絡み合う経絡や経穴をシステムとして捉え,①ペトリネットを用いた人体のモデルを構築し,②モデルの解析によって経絡の仕組みを解明することにある.さらに,③未知の経穴や複数の経穴への新しい刺激の組合せを発見することを目指している. 東洋医学の人体モデルを構築するにあたり,まず五臓六腑のモデルを先に構築しなければならない.その上で,経絡のモデルの構築や五臓六腑モデルとの結合をしていく.平成25年度において,五臓六腑のペトリネットモデルをほぼ完成しており,五臓六腑との深い関わりのある経絡である心包経の設計や五臓六腑モデルとの結合の設計を行っており,人体のモデルを構築するための基礎を築き上げた. 従って,現在までの達成度はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を踏まえて,今後は次のような方策で進めていく. まずは,東洋医学の医療現場での調査や文献調査を実施し,五臓六腑のペトリネットモデルにおけるパラメータの確定を行う.その上で,東洋医学の「証」を元に,心包経のモデルを完成し,五臓六腑と心包経を融合・結合した「人体コアモデル」を確定する. ペトリネットのシミュレーションツールであるCPN Toolsを用いて,人体コアモデルのシミュレーションを行い,その正当性や有用性を確認すると共に,心包経を構成する経脈・絡脈・経穴およびその周辺の経絡や五臓六腑との関係を解析する. 以上の研究結果を踏まえた上,経絡全体を含んだ人体モデルを開発する.CPN toolsを用いて人体モデルのシミュレーションを行い,医療現場でのデータとの比較検討も実施する.このように,経絡の仕組みを究明していく.さらに,経穴の刺激の組合せを検討し,シミュレーションを行い,従来になく結果のよい組合せを新しい治療法として開発していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画では,パソコン等の環境整備をしつつ,東洋医学の人体モデルを作成することを予定していた.ペトリネットによる人体モデルを作成するうち,東洋医学における人体に関わる調査やモデルの理論作りがより重要になってきたため,医療現場や研究機関における研究調査やペトリネットによるモデルの理論検討を中心に,研究を展開した.よって,物品に関わる予算執行が予定より少なくなり,次年度使用額が生じることになった. 平成25年度において生じた次年度使用額を次のように執行する予定となっている. ①人体モデルのシミュレーションができるパソコンやデータ処理用ソフトウェアを導入する.②遠隔通信のできるネットワーク通信機器を導入する.③研究成果の投稿料として執行する.
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