研究実績の概要 |
本研究では、高齢者の音声に対する独自の解析手法を提案することで、ごく早期の認知症の発見・予防を目的とした極めて簡易な音声認知症スクリーニングの基礎アルゴリズムを開発する。3年目である平成27年度は以下の項目について研究を実施した。 1)スクリーニングに有効な韻律特徴の組合せを構築して判別する技術の研究開発 昨年度までに「有効な韻律特徴を選択する技術の研究開発」として開発したロジスティック回帰分析の技術を応用し判別モデルを構築した。被験者数:N=162、解析対象音声:日時の見当識課題(HDS-R,Q2)の回答音声(有効回答音声部分の切出し)、健常/軽度ADの2群判別性能:感度90.12%,特異度88.89%,正診率89.51% 2) 音声認知症スクリーニングの実用化を意識した音声区切りの採用 World Wide Web上のアプリケーションとして本研究技術を実現するための研究調査と試作を実施した。これまでは、回答音声のWAVファイルを人手で聴取し、有効回答部分の音声を抜き取る作業を行っていた。これに対して、簡単なWeb会話システムで自動的に実現可能な音声区切り方法として、この作業工程を省略し、質問者の音声終了後、何らかの音声が発話された時点を区切り点とする全回答音声データ(相槌や言いよどみ、短時間無音区間などのプレフィックス音声部分も含む)を対象として、軽度ADの判別に関して実験を実施した。 被験者数:N=162、解析対象音声:日時の見当識課題(HDS-R,Q2)の回答音声(全回答音声)、健常/軽度ADの2群判別性能:感度84.0%,特異度82.7%,正診率83.3%、上記1)の結果と比較して若干の性能低下が見られるものの、システム自動化のためのトレードオフとして許容範囲内と考えられる。これにより、会話システムによる回答音声の自動切り取りと、回答のレスポンス時間の計測が可能となった。
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