スマートグリッドにおける遠隔自動検針システムAMI (Advanced Metering Infrastructure) では、スマートメータと呼ばれる無線機能付きの電力計により、電力消費量のデータを自動的に計測し、送信するネットワークを構築する必要がある。電力需要動向をリアルタイムに監視することで、柔軟な料金プランの設定、電力需要の抑制、ピークシフトなどが可能となる。消費電力量のデータは一定期間(検針期間) ごとに収集されるが、ネットワークの余剰通信帯域を利用してガスや水道の使用状況など、他の用途に利活用することでネットワークの有効利用が可能である。そこでAMI においては、二つの通信方式を組み合わせた、ハイブリッド通信方式の採用が検討されている。この方式では、定期的に収集するデータの通信にはポーリング方式を、より低頻度なデータの通信にはランダムアクセス方式を用いる。ポーリング方式とランダムアクセス方式による最適なスケジューリングを検討するために数理モデルを開発し、基礎的な検討を行った。さらにランダムアクセスを行う端末数(ON 状態端末数) が時間的に変化する場合も考察し、省電力化のためスマートメータの電源を定期的にOFF にすることや、スマートメータを設置した端末が通信可能なエリア外に移動する影響に関しても数理モデルの解析に基づき、端末数の時間的変化による通信性能への影響を評価した。性能評価指標としてはスループット、送信成功確率、送信遅延の平均および分散を採用した。数値例より、総端末数が多い場合には、OFF 状態期間の割合をON 状態期間に比べて大きく設定することで通信性能が向上することが分かった。また、各状態の切り替え頻度の高低によっても、通信性能が大きく変化する場合があることが判明した。
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