本研究では,これまで多くの研究者が取り組んできた検索システムのアクセスログを解析するという方式にとらわれず,既に文書形式で記録として存在している利用者の検索システムを用いた手順を活用した利用者の検索行動の補助機構の提案を行った.ここでいう「記録として存在している検索システムの利用手順」とは,検索システムのアクセスログのような単純なデータではなく,需要の多い質問に対してあらかじめ必要な資料を準備・作成し,文書として保存されたものから抽出できる利用者の情報行為 (情報を得るためにとったユーザの検索行動) を指す.この検索行動を抽出,知識ベース化することで,利用者の情報要求に対し,どのような過程を経て,情報の発見に至ったかを示すことができるため,最終的にいわゆる情報弱者が陥る「何をしてよいのかわからない」といった状況を回避することができる. 研究実績として最も意義があった研究内容は,文書に記録として残されている検索行動から情報行為を抽出する際に,単純にトピック推定を行うよりも階層的な係り受け解析を行うことでトピック推定を正確に行うことができるようになり,その結果,抽出された情報行為の正確性が向上したことである.しかしながら,抽出された情報行為を知識ベース化する,すなわち,一般的に知識ベース化する際に行われているように汎化の処理を自動化するというアプローチでは,ヒトの行動があまりにも多岐にわたり,汎化につなげるための知見が思うように得られなかったという問題点に直面した.この問題点の解決には,人間の行動問題の分析と修正を目的とした応用行動分析の結果を活用することが有用であるとされているため,今後は応用行動分析の分野の知見を用いた汎化を考えていく予定である.
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