研究課題/領域番号 |
25540153
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
杉本 重雄 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (40154489)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ディジタルマンガ / メタデータ / メタデータフレームワーク / コンテンツ制作 / コンテンツアクセス / Linked Open Data / マンガオントロジー / コンテンツ制作支援 |
研究概要 |
本研究では、1.マンガメタデータフレームワーク(MMF)に関する基礎的研究、2.ディジタルマンガの構成方式、3.マンガ制作の上流工程支援、4.ディジタルマンガの読書環境を主たる研究項目として研究を進めている。平成25年度においては、1.に関して、京都国際マンガミュージアムの協力により提供された書誌情報からFRBRのWork他の実体を同定する研究を進めた。この過程において、冊子体のマンガに関するWork実体の捉え方に関する新たなモデルの提案、書誌情報からのWork実体の同定の自動化に関する評価等を行った。2.に関して、MMFの視点から、ディジタルマンガとビデオコンテンツとの対比の試みを進めた。3.に関して、ディジタルマンガの制作過程をモデル化し、それに基づく制作支援ツールの開発を進め、ネームの制作時におけるアノテーション作成と利用、過去の制作過程で作られた資料の利用支援等に関する研究を進めた。4.に関して、マンガへのアクセス支援と内容の記述の視点から、マンガに関するオントロジーの研究、ならびにディジタルマンガのためのディジタル書棚に関する研究を進めた。 書誌情報からのWork実体の同定実験においては、冊子指向である従来の図書館等の書誌情報に加えて、Wikipedia等の情報資源を利用することで一定レベルでのWork同定は可能であること、一方、ストーリー内容を単位とする同定が十分には行えないといった課題が明らかになった。 制作支援ツールの開発、ディジタル書棚の開発の取組みでは、ソフトウェアツールを試作し、それに基づく機能要求の再検討等を行った。また、オントロジー開発においては、映画に関する既存のオントロジーを基礎とし、Wikipediaの階層構造等を参考にし、さらにLinked Open Dataへの対応を考慮して研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、制作から検索、読書までの全過程を支えるメタデータスキーマのモデルであるマンガメタデータフレームワーク(MMF)を提案し、それをベースにしたディジタルマンガ制作の上流工程やネット上での読書を支援するソフトウェアツールの試作を進めることである。平成25年度は、研究実績の概要欄に示したように4つの研究項目について研究を進めた。 本研究の挑戦的なテーマは、マンガ制作の上流工程の支援技術、ディジタル環境におけるマンガの新しい読み方に関わる技術の開発である。平成25年度においては、前者に関して、マンガのストーリー作成からネーム作成に関わる過程をモデル化し、付箋紙のメタファによるデザイン支援、中間段階での制作物の再利用支援等に関する機能要求を検討し、ツールの試作を進めた。後者に関しては、マンガへのアクセスの視点から取り組むこととし、マンガのための電子書棚を実現するためのマンガの電子的配架(分類と順序付け、配列)のための規則を作ることを中心として研究を進めた。また、ストーリー作品を主とするマンガを対象とする上で、Work実体からのアクセスを可能にするため、図書館等の所蔵資料を表す書誌情報からFRBRのWork実体を同定する研究を進めた。オントロジーを含めマンガのためのメタデータに関わる研究に関しては、既存の書誌情報、Wikipedia等のインターネット上で公開されているリソースを利用して進めた。 これまでの研究成果は国際会議他で発表してきており、一定の成果は出ていると考えている。マンガ制作の上流工程に関わる支援ツールについては、まだ試作段階であり、その評価と評価に基づく開発の継続が必要である。マンガへのアクセス、マンガの読み方に関する研究についても、同様に平成25年度の成果に対する評価が十分には済まされていないので、平成26年度は、それらの評価に基づき、研究を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目の主たるテーマとして、マンガ制作の上流工程の支援ツールの開発とインターネット環境におけるマンガへのアクセスと読みの支援手法を中心に研究を進める。本研究では、MMFとLinked Open Data(LOD)を基礎とした研究を進める。また、本研究の推進に関連して、研究者、民間企業の技術者、専門家を交えたメタデータの研究会等を主催することで、多様な視点からの知見を得て研究を進める。 マンガ制作の上流工程支援ツールの主たる課題は、平成25年度の試作ツールを基礎として実験のためのツールを作成し、評価実験を行うことを目標とする。また、このツールでは、制作過程において作成されるメタデータをResource Description Framework形式で出力保存し、LOD環境における利用性、相互運用性を高めるようにする。 インターネット環境におけるマンガへのアクセスと読みの環境に関しては、これまでのディジタルマンガ向けディジタル書棚と、それを支えるメタデータスキーマ並びにオントロジーの研究が中心となる。ディジタル書棚は、いわゆる本棚のグラフィックインタフェース化ではなく、並べられる書籍とその利用方法に応じてチューンされる書籍へのアクセスのためのインタフェースであり、いわば対象と利用方法に応じたメタデータの可視化である。図書館ではマンガがあまり扱われてこなかったが故にマンガの分類や件名の語彙が整理されていない一方、ネット上には多数の関連情報資源が存在するといった背景の下で、本メタデータを核とする研究を進める。また、本研究では、LODに対応するメタデータを組み込んだマンガのコンテンツを作成して本研究に利用することを計画している。こうしたコンテンツを利用することで、コンテンツ間のリンクを利用した新しいアクセス方法について研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画に基づき研究を進めた。計画に対して、国際会議の参加等のため旅費が計画より多かったが、研究遂行のために購入した機材が予定したものより安価なもので済んだこと、その他の項目として計上していたソフトウェア等の経費が不要となったため、14万円程を次年度に持ち越すことになった。 平成26年度、持ち越した14万円余りを、国際会議等での発表、研究遂行の補助のための謝金などを中心に使用することとし、他は、計画通りに進めることを考えている。
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