研究課題/領域番号 |
25540155
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓己 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (80211944)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歴史情報 / メディア史 / 流言蜚語 / パニック / 災害報道 / くちコミ / うわさ / デマ |
研究実績の概要 |
本研究「近代日本における流言効果のメディア史的研究」は、デマ、うわさ、陰謀論など流言蜚語や誤報がメディアと世論形成に与えた影響に関する歴史研究の基盤形成を目的としている。史料批判を前提とする歴史研究では、これまでこうした曖昧な情報は周辺化され、体系的研究は進んでいない。第一年目の流言に関する既存研究の整理を受けて、流言とその報道に関する分析に着手した。 その成果は、季刊『考える人』2014年冬号から連載「メディア流言の時代」として公開を開始しており、今年度は2014年4月刊行の第2回「関東大震災と<災害デモクラシー>」、第3回「キャッスル事件の呪縛」、第4回「2・26事件の『流言蜚語』と太古秘史のデモクラシー」、第5回「造言飛語とデマ大戦」を扱った。以後も、対象時期を現代まで伸ばして研究成果を連載で公開してゆく予定である。また、研究で得られた知見を社会に還元するため、2014年8月におこった朝日新聞「誤報」検証問題などについても、成果の一部を公開している。例えば、「誤報事件の古層」『図書』(岩波書店)789号や「誤報のパラダイム転換ができれば新聞全体の信頼性は間違いなく回復する」『Journalism』(朝日新聞社)298号などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに成果の公開も始まっており、最終的な成果の公刊も予定されているため、順調に進展している。また、「あいまい情報」の歴史学という点では、本研究の理論的基盤をもとに佐藤卓己編『ヒトラーの呪縛―日本ナチカル研究序説』(中公文庫)が2015年6月に刊行予定となっている。この執筆作業も研究協力者・教育社会学の佐藤八寿子(京都女子大学非常勤講師)や京都大学教育学研究科の大学院生の協力も得ながら研究を進めている。大学院生とともに組織した「流言メディア史研究会」もおおむね隔月で開催し、関連文献の報告会などを行っている。最終年度も研究会活動はさらに定期化させてゆく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は近代日本社会におけるメディア流言現象を時系列的に分析するため、資料調査は順次継続的に進める必要がある。最終年度は成果公刊の準備を本格化するとともに、これまで収集した調査資料を整理し、再検討をくわえる必要がある。そのためにも、研究代表者である佐藤卓己を中心に京都大学教育学研究科メディア文化論研究室の大学院生などからも研究協力を得て、組織的な研究体制を構築してゆく。研究会開催や研究者へのヒアリングの回数を増やし、こうした共同作業の成果は『京都メディア史研究年報』第2号(2016年3月刊行予定)に掲載するつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織的な研究成果の発表媒体として予定していた『京都メディア史研究年報』創刊号の刊行が2015年4月にずれ込んだため、刊行費、発送費が次年度送りになったことが大きい。また、流言事件の現地出張調査のスケジュールが調整できず、2015年夏に計画を変更したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
成果発表媒体としての『京都メディア史研究年報』創刊号は2015年4月に刊行する。さらに、同第2号も2016年3月に刊行する予定である。次年度は流言事件の現地出張調査を夏に行い、国立国会図書館などで最終的な資料集めを集中的に行う予定である。
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