研究課題/領域番号 |
25540157
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
竹下 正哲 拓殖大学, 国際学部, 准教授 (70625772)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 災害情報 / 防災 / 東日本大震災 / 被災者 / 証言 / 物語 |
研究概要 |
本研究は、大規模災害が起きた際、政府・自治体が先回りをして必要な対応策をうてるよう時系列災害情報(24時間後、48時間後、1ヶ月、半年、2年、5年、10年後で何が起こるのか?)を作成することを主な目的としている。それをつくるには、従来の計測による客観的データでは不十分で、被災された方々の証言(物語)から主観的データを抽出していくことが重要になってくる。 平成25年度はデータ収集の年と位置づけ、石巻を中心に現地フィールドワークを重点的に行った。6,8,11,3月に石巻を訪問し、被災された方々を対象に詳細なインタビューを行った。多くの方々は家のみならず、大切な子や孫、夫などを失っているため、研究者がいきなり訪ねていっても話を聞かせてもらえるものではない。しかし本研究では、現地に根ざして活動している協力者の尽力により、多くの方々が貴重な証言を得ることができた。 また25年暮れに東京都大島およびフィリピンにて立て続けに大規模災害が発生したことを契機に、災害後に起こる問題の共通性や相違点を検証するため、大島およびフィリピンにて現地調査を行うこととした。(大島は26年2月に2回実施済み、フィリピンは26年5月末に予定。) フィールド調査の他に、25年度は映像資料から当時の全体像を把握するように努めた。NHKアーカイブスから許可をいただき(学術利用トライアル研究II第3期採択)、当時の映像資料を閲覧することで、情報収集を行った。その際、東日本大震災を中心に、阪神・淡路大震災、中越沖地震、福岡県西方沖地震など多くの事例について調べた。 また本研究プロジェクトのホームページを作成し、現在公開に向けての準備を進めている。(2014年6月公開予定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は現地フィールド調査や映像資料調査などによって基礎データを収集することに専念した。それらの基礎調査を続ける中で、東日本大震災や阪神淡路大震災等の全体像を把握することができたと同時に、従来の客観的に科学では拾われにくい主観的データ(物語データ)を数多く得ることができた。それらは政府・自治体が先回り災害対策を講じていく上では、貴重な資料になると期待される。 現地調査を繰り返す中で気づいたことは、インタビュー数を増やすことにあまり意味はないということであった。なぜなら、通常の研究は多数のサンプルから共通項を抽出し、背後に隠された法則性を浮き彫りにするという手法をとるため、サンプル数(インタビュー数)が多ければ多いほどよくなるのだが、本研究はそのような抽出型ではなく、予期される問題を列挙し、一覧化していく集積型なので、被災された方5人ほどにインタビューをすれば、その立場における問題はおおよそ網羅されてしまうことが判明したからだ。その後さらにインタビュー数を増やしても、データが重複していくだけで、研究の効率は鈍化する。 そのような理由から、研究計画を若干変更することとした。当初の人海戦術的なインタビュー手法を見直し、少数の対象から深く聞き取る方式に改めると同時に、インタビューの対象を被災者だけでなく、支援者の側にも広げることで立場の多様性をもたらすようにした。また東日本大震災を中心としながらも、大島、フィリピンなど最新の被災地でインタビューを行うことにより、比較検討できるケースを増やすことにした。 東日本大震災や阪神淡路大震災については、膨大な既存資料が存在しているので、今年度からはそれらからの情報を整理し、本研究のフィールドデータと統合することで、新たな知見を創造していく。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基礎データの収集を継続すると共に、膨大な既存資料の情報も整理・統合していくことで、時系列災害情報をはじめとする新たな知見を創りあげていく。 これまでの調査から、どこの地域においても大災害発生直後には、水、食料、ガソリン、薬などが著しく欠乏することが明らかとなっているが、その中でもとくに食料については、日本の体制に大きな不備があることが分かってきた。当然のことながら、大地震や津波の後には、道路は寸断され、港や空港も崩壊する。そのような状況にあって、いかに食料を安定的に被災地まで届けるかは政府の大切な責務であるが、そのための備え――とくに平時における準備と点検――が不十分であることが分かってきた。それは海外においては「食料安全保障」と呼ばれるものだが、日本で食料安全保障というと、常に食糧自給率の話と混同され、災害時への備えの議論がほとんどされていないのが現状であった。 そこで本研究では、これまでの震災での教訓を踏まえ、また海外の先行事例も合わせて検討し、日本における本来の「食料安全保障」についての提言をまとめていきたい。初年度は基礎データ収集と位置づけていたため、論文などの報告が少なかったが、今年度以降に徐々に成果を報告していくこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ホームページ制作委託費210,000円の請求が3月31日となってしまったため、会計処理上、今年度には間に合わない形となってしまった。 それを差し引いた残り(16,879円)については、文献資料購入に充てようと計画していたが、ホームページ委託費の金額が決定するのを待っていたため、次年度になってしまった。 残金226,879円のうち210,000円については、すでにホームページ制作委託費として用途が決定している。残り16,879円については、文献資料の購入に使う予定となっている。
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