プログラミング初学者は、条件や繰返しなどの基本的なプログラミング要素を正しく理解していないことがある。そこで、初学者向けのプログラミング教育において、簡単なプログラムの実行結果を答えさせることで、変数の値の変化を追うトレーシング能力を問う小テストを開発した。 また、このような小テストを実施するために、学習管理システムやその周辺システムを一体的に運用するための標準規格 IMS Learning Tools Interoperability に準拠して動作するオンラインツールを開発した。 以上の準備の下で、具体的には for ループと if-then で構成されるトレーシングに関する小テストを、本研究期間以前も含めて合計5年間実施して、この小テストで見られる初学者の特徴的な誤りを「誤答パターン」と呼び、誤答パターンに当てはまる学生について、プログラミング全体の能力を問う定期試験との成績の相関を調査した。その結果、for ループを解釈しない NFL と呼ぶ誤答パターンに当てはまる学生グループについて、定期試験の成績が低いことが分かった。 プログラミング学習において、繰返しを正しく解釈しない学生が常に一定数存在し、このような学生のプログラミング能力は、少なくとも筆記試験で測定する限りにおいて、やや低い傾向があるといえる。 繰返しはプログラムにおいて最も基本的な構成要素の一つであり、これを正しく解釈しないことは、他の構成要素やプログラムに関わる他の概念の習得を阻害している可能性があることが明らかになった。
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