楽曲間の主観的な類似度の計測行列を基に、個々人の楽曲に関する主観的評価と音楽情報(リズム尺度、スペクトル尺度、楽器構成、演奏テンポなど)との対応関係を数理的に解析する方法について研究を行った。 研究の着想は、主観的類似性を表現する行列を、三角化(下三角成分に行列成分を集める変形)することにより、個人性と楽曲間類似順位とを分解することである。Webを介して、100以上の楽曲ペアに対する主観的類似度の評価結果を収集するシステムを構築し、研究用に公開されたポピュラー音楽を対象にした主観的類似度行列を収集した。 当該資料を用いて、数量化理論Ⅲ類、線形判別分析などの従来法の振舞を観察した後、シグモイド関数に基づく最尤化を中心に具体的な下三角化のアルゴリズムを検討した。 類似度判定を個人毎に予測する実験を通じて、下三角法の評価を行った結果、従来法を上回る性能が得られ着想の正当化が確認された。
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