研究課題/領域番号 |
25540172
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
片寄 晴弘 関西学院大学, 理工学部, 教授 (70294303)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ゲームプログラミング |
研究概要 |
Computerが対戦相手,もしくは,パートナーを務めるビデオゲームのプレイフィールの質を大きく左右するものとして,NPCの振る舞いのデザインがあげられる.この実装にかかる作業の軽減,および,人工知能の興味から,NPCの振る舞いの自律的獲得に関する研究が進められてきた.この結果,人間を凌駕する「強い」NPCの自律的構成も可能となったが,その一方で,「人間らしい強くなさ」,「プレイヤレベルにあわせた自然な振る舞い」をどう構成していくのかが,課題として浮かび上がってきている.本応募研究課題では,これらを,アドホックにプログラムするのではなく,生物の基本原則を導入した強化学習によって,自律的に形成させる手法の開発を目的として実施する. 2013年度は,予備実験として執り行ってきた Q学習に加えて,強い NPC の自動構成に実績のある経路探索アルゴリズム A-starアルゴリズムに「生物の基本原則(センサ系のエラー,疲れ,新奇なるものに対する希求)」を組み込んだ系でNPCの振る舞いを構成し,その振る舞いに対しての心理評定実験を実施した.この結果,Q学習,A-starアルゴリズムの双方において,「生物の基本原則を導入した」場合,そうしなかった場合と比べて,人間らしいと評価される振る舞いがより多く出現することが確認された. 以上の成果について査読付き国際会議、国内主要シンポジウムで発表した.その結果,発表賞を複数回受賞する等,高い評価を得ることができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Q学習に「生物の基本原則(センサ系のエラー,疲れ,新奇なるものに対する希求)」を組み込むことによって,「ためらい」や「余裕をもっている」等、視聴者が「人間らしい」と感じる振る舞いが得られることが予備実験によって確認されている. 2013年度は,「生物の基本原則」導入の効果の汎用性の確認を目的とし,「A-starアルゴリズム」への適用,さらには,得られた動作の「人間らしい強くなさ」の心理学的な考証にとりくんだ.具体的には,Q学習,A-starアルゴリズムの双方に,「生物の基本原則」を導入した場合とそうでない場合での振る舞いのビデオデータを用意し,「人間らしさ」の視点での心理評定を実施した.この結果,Q学習,A-starアルゴリズムの双方において,「生物の基本原則」を導入した方が,有意に,人間らしいと判定されることが確認された. 以上の成果について,情報処理学会シンポジウム Entertainment Computing 2013,情報処理学会ゲームプログラミングワークショップ2013,国際会議 International Conference on Advances in Computer Entertainmnet Technology (ACE)2013にて発表した.その結果,ゲームプログラミングワークショップにて最優秀論文賞,ACEにて ACE Gold best paper award を受賞した.また,ゲームプログラミングワークショップでの最優秀論文賞により,情報処理学会での研究会推薦論文の評価を受け,投稿論文が2014年度の情報処理学会論文誌の掲載が決定している.以上が示すように,研究は順調(計画以上)に進展していると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
2013年度の研究は順調に進捗してきたが,その過程において,「人間らしい」あるいは「自然」と判定する場面が,人間の評価者のゲームスキルによって大きく異なることがあるという状況を確認してきた.その部分を見誤ると成果の正当性を主張できない可能性がある.このテーマにおいては,評価者のコントロールが極めて重要である.この問題は,本研究のみならず,エンタテインメントコンピューティングの領域における共通の課題である.研究計画策定時には,本年度は,1)集積した人間プレイヤのプレイログと獲得されたNPCの行動パターンを比較検証,2)熟達にかかる人間プレイヤのメタ知識の抽出,の実施を掲げていたが,若干軌道修正を行い,エンタテインメントコンピューティング領域における評価の実施法,特に,評価者のコントロールに焦点をあてた評価計画の策定にも取り組む.
|
次年度の研究費の使用計画 |
成果発表のため参加予定にしていた国際会議においてプログラム委員長を務めた結果、委員会から参加費、旅費の一部補助があり,当初計画より負担を少なくすることができた.2013年度の掲載を見込んでいた論文誌の掲載が2014年度(7月)にずれこんだ結果,論文掲載料を2014年度で使用することになった.執行を予定していた謝金について予算の逼迫が予想される次年度で執行することにした. 今後の研究の推進方策にも記した通り,エンタテインメントコンピューティング領域における評価の実施法,特に,評価者のコントロールに焦点をあてた評価計画の策定を追加して実施する.主として,謝金は,その用途に利用する.論文掲載料については本年度,7月に執行予定である.旅費については関連国際会議への追加参加に充当する予定である.
|