研究課題/領域番号 |
25550002
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
青木 茂 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境分析 / 極地 / 南極海 |
研究概要 |
本年度は初年度としてプロトタイプブイの製作を行い、ブイの動作確認から輸送・保管までを含むシステム全体の運用にかかわる基礎的な整備を実施した。ブイのプロトタイプ機材を製作し、それに対して水槽による400m耐圧試験で確認した後、駿河湾の300m深海域における2日間の実海域試験を行った。実海域試験期間中、300m深潜航静止時に深度を一定に保つ制御ロジックが正しく作動すること、および浮上時に取得データをイリジウム通信により正しく伝送することを確認した。この際、ブイの浮上に要する時間も一時間程度であることを確認し、おおむね予想された範囲内にあることが分かった。海面浮上時にセンサーにより取得した圧力、水温、塩分のデータ伝送・受信にも成功し、それぞれ正常な値を示すことを確認した。ブイ本体の輸送・保管についても実地の対応から知見を得た。 現時点で想定している耐深、観測回数要求に対する制約から、プロトタイプブイの重量と容積が一般的なアルゴフロートのそれを大きく上回っているため、ブイの台座としてステンレスフレームを準備し、木箱にいれて輸送する形式とし、実際に東京‐札幌間を輸送した。こうした梱包、輸送手段については、幾つかの改良し省力化する余地があることが確かめられた。来年度に想定しているオホーツク海におけるより低温な環境においての長期の試験的な運用に向けて、観測を実施する漁船チャーターに関する情報収集、ブイを保持する中間ブイを含む係留系プラットフォームの全体設計など、具体的な準備を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに確認した範囲では、開発したブイは当初想定した性能を発揮しており、計画は順調に進展していると言える。また、今後の運用に関する準備も、概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
本ブイシステム開発が運用を想定している海域は、水深300mから500mの極域大陸棚上海洋である。年度の前半に、すでに整備したプロトタイプブイを用い、オホーツク海の水深400m程度の海域において、一カ月から二カ月程度の予備的な観測を実施する。本体ブイを係留するプラットフォームとなる中間ブイから切り離し装置、アンカーを含めた系全体を整備する。このプラットフォームには、基礎環境データとなる水温、塩分、流速データが取得できるようなセンサーを配置する。オホーツク海沿岸漁業組合などにおいて漁船のチャーターに関する具体的な折衝を行い、設置・回収にかかわるプラットフォームを確保する。小型船舶によるブイ本体の海上輸送方法、設置・回収方法を確立する。係留期間中には、取得データ伝送の成否の確認、および中間ブイの挙動の解析を行う。本体ブイバッテリーの消耗やより多様な海況変動に対する姿勢応答と耐久性の試験を主眼とする。一定の期間の後ブイシステムを回収し、ブイ本体に加えてプラットフォームに設置したセンサーにより得られた流れや水温塩分の挙動から、流況に対するブイの応答の詳細を調べる。解析の結果、ブイの応答に改善の余地が見られた場合には、ブイメーカーとの共同作業により、正常化へ向けた調整を行う。 期間の後半に、この観測の実施状況を踏まえ、南極海もしくは再度オホーツク海で、結氷を伴う低温海域における試験を実施する。そのために本体ブイのバッテリー交換や動作確認など、ブイの再調整を実施する。また実施海域に応じて、上記のような中間ブイを含む全システムの準備を再度行う。今回の運用では、前回までの試験項目に加え、海氷の存在を考慮したロジックへの対応、低温化における長期耐久性をチェックすることを目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ブイシステム本体の納品を、バッテリー残量と観測計画との関連から3月20日としたため、本年度中の予算執行に間に合わなくなった。 次年度4月中に執行される予定である。
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