研究課題/領域番号 |
25550003
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮崎 雄三 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60376655)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ペプチド / エアロゾル / 海洋微生物 / アミノ酸 |
研究概要 |
本研究では、海洋表層微生物に由来する大気有機エアロゾルの生成機構解明に向けて、海洋大気エアロゾルに含まれるペプチドを主とする含アミノ酸有機物の検出を目的としている。 平成25年度は、アミノ酸標準物質の濃縮と誘導体化の作業過程における不純物・干渉成分の寄与(ブランク値のレベル)を調べた。誘導体化試薬としてN-(t-butyldimethylsilyl)-N-メチルトリフルオロアセトアミド (MTBSTFA) を用いて含アミノ酸有機化合物の標準物のアミノ基とカルボキシル基をシリル化(誘導体化)し、純窒素で乾燥後、MTBSTFAとジメチルホルムアミドを混合させた後、70度で約30分間加熱後、試料をGCに導入する誘導体化の手法を確立した。その結果、試料の溶媒として通常用いる超純水では、ブランク値が高くなる(数十~数百ng/ml)ことがわかった。そこで、溶媒としてより純度の高いChromasolvグレードの超純水を複数回蒸留して用い、同様の検証を行った結果、ブランク値が1桁低減することが分かった。また、実大気サンプル中の無機成分の干渉を除くため、文献を参考に超純水とイソプロパノールを1:1の割合で混合させると、アミノ酸の検出効率が2倍以上改善なすることが明らかになった。さらに海洋微生物の含アミノ酸有機物への寄与を有機炭素ベースで推定するため、エアロゾルの起源情報を含む水溶性有機炭素の安定炭素同位体についても、測定法の精度検証を行った。濃縮過程等の検証の結果、海洋大気エアロゾルのような低有機炭素濃度でも十分な感度で測定可能な条件を見出した。 分析過程において使用する溶媒や化学物質の検討、濃縮法の改善による干渉成分の低減により、測定精度を高めることができた。海洋大気エアロゾル中の含窒素有機物の組成解析に向けた各分析手法が確立されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋大気エアロゾルに存在する含窒素有機物組成及び酸素同位体測定に関して測定手法と精度を検証・改善した。海洋大気エアロゾル中のようなアミノ酸が微量(数百pg/m3前後のオーダー)な条件についても、十分な精度で分析する手法が確立されつつあり、当初の研究計画について概ね達成されている。
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今後の研究の推進方策 |
結合態アミノ酸の加水分解条件の詳細な検討と遊離体アミノ酸の定量に向けた分析の各プロセス(誘導体化効率、回収率、再現性)における検証実験を詳細に行い、実大気サンプルの分析を十分な精度で行えるよう研究を推進する。また、HPLCを用いた従来の分析法による結果との比較も視野に入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
化学分析に必要な消耗品が当初の想定より低い金額で購入できたため、主に物品費を中心として次年度使用額が生じた。 平成26年度は実大気試料を用いた分析回数が増えることが想定されており、計画通り試料分析に必要な物品(消耗品)購入に使用する。
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