飛翔体を利用したリモートセンシングは、災害監視と環境計測などの目的に対して非常に有力な手段であるが、その場計測に比べると得られる情報は限られてくる。その中で注目されているのが光の偏光情報である。スペクトル観測だけでは難しい樹種の判別や、雲・エアロゾル粒子の粒径分布の推定、河川や湖沼、さらに洪水地域を含む陸水分布の把握、海洋計測での太陽反射の影響の除去等、リモートセンシングの可能性を大きく拡大する切り札である。しかし、従来の偏光板をモーターで回転させる計測では、装置のサイズ、重量、計測時間などの点で飛翔体搭載に向かないため、普及は進んでいない。本研究では、可動部や電気素子を一切用いない画期的な偏光計測技術を応用し、超小型衛星や無人航空機にも搭載可能な偏光カメラの開発を行うことを目的としている。26年度は、25年度に明らかになった強散乱体を測定試料としたときの問題について克服策を検討した上、装置全体を完成させ、実験室での試験撮像の結果、予定通り、完全な偏光情報(4個のストークスパラメータ)を導出できることを確認した。さらに生きた植物と模造品の撮像を行い、通常のカメラ画像では判別できないそれぞれの葉脈の状態について、違いを検知できることが明らかになった。本研究では、本体の大きさが10x10x20cm余りと小型ながら精密な偏光情報を可動部無しで取得できる計測装置の開発に成功し、その基本性能を確認した。これにより、小型飛翔体による偏光観測に目処を立てることができ、衛星フライトモデルの設計・製作に入れる段階となった。
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