研究課題/領域番号 |
25550009
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
妹尾 啓史 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40206652)
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研究分担者 |
磯部 一夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30621833)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 土壌学 / 環境分析 / 窒素循環 / 同位体分析 / 森林生態系 |
研究概要 |
1.NOの測定法の確立 15NO2-添加土壌ミクロコズム試験において、培養容器ヘッドスペース中のNO, N2O, N2濃度をGC-MSを用いて定量した結果、シグナル強度においてNOはN2Oを上回ることが示され、NOが潜在的に重要な土壌窒素放出形態であることが示された。その後の検討においてGC-MS測定の際にモレキュラーシーブカラムを用いた場合、NO濃度に応じて測定条件を変更する必要があると考えられたため、液体窒素による冷却トラップとPLOTカラムを組み合わせて大気成分とNOを分離、定量する手法を確立した。 2.土壌の亜硝酸動態を制御する要因解析 測定法開発と平行して、森林土壌におけるNO2-動態とガス態窒素の放出がどのような条件に制御を受けるのかを明らかにするために、スギ人工林プロットにおいて有機物層、鉱質土層の網羅的なサンプリングを行い、NO2-変換速度の算出と15Nの変換先(NH4+,NO3-,溶存有機態窒素,ガス態窒素)をトレースした。その結果、特に鉱質土層において亜硝酸のガス態窒素への変換が迅速に生じており、この放出は主に土壌のpHなどの化学性によって制御をうけていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モレキュラーシーブカラムを用いてNOと大気成分(N2, O2)が分離できる測定条件の検討を行い、NO2-がNOとして損失する経路が潜在的に重要であることを確認した。具体的には、15 NO2-添加条件下でのNO, N2O, N2生成を培養容器ヘッドスペースのモニタリングにより確認したところ、NO2-添加後15分においてみられたNOのピークのシグナル強度は同時点におけるN2Oの約10倍に達していた。しかし現状ではNOの定量には至っておらず、冷却トラップを大気成分とNOの分離に用いることで定量を目指す手法の検討を行っている。また、15N18Oデュアルトレーサー測定法については今後の課題として残っていることから、測定法の確立については予定に比べて遅れている。一方で、平成26年度に予定していた森林土壌中のNO2-動態の解明については予定を早め、平成25年度中に詳細な試験をおこなった。スギ人工林の8×100 mプロットにおいて網羅的にA0層、0-10cm土壌のサンプリングを行い、15NO2-添加培養によるNO2-生成/消費速度の算出とNO2-がNH4+,NO3-,溶存有機態窒素,ガス態窒素へ変換される量を算出した。その結果、添加後30分の時点で添加した亜硝酸のガス態窒素への変換が顕著に生じており、この放出は主に土壌のpHなどの化学性によって制御をうけていると考えられた。測定法開発と土壌の窒素動態解析の進展を総合的に考え、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
亜硝酸由来のガス態窒素生成におけるNOの重要性を明らかにするために、NOのトレーサー定量法の開発を継続する。具体的には、冷却トラップの温度管理を向上させ、大気成分は回収されずNOのみが安定的に回収されるように改良行う。また既に購入済みの15NO同位体スタンダードガスや今後購入予定の14NO濃度スタンダードガスを用いて定量性の確認を行う。濃度定量が達成できないと判断した場合はNOx計によって濃度を、GC/MSにより同位体比のみを求めることを検討する。また、18Oを含む解析に必要なフラグメントイオン生成効率、ローテーションの効率についても検討を進める。平成25年度の研究により、pHや含水率、窒素濃度などの土壌条件に差を有する斜面プロットについてNO2-動態の詳細な分布が得られているため、これを地理統計学的に解析することでガス態窒素放出の特性によりプロットを3つ程度に分割する。これら各分割プロットの土壌に対して15N,18Oトレーサーの添加培養実験を行い、NO2-生成・消費速度などの動態解析とNO,N2O,N2の濃度/同位体比測定を行う。これにより、土壌の特性、NO2-動態、ガス態窒素のうちどのような種類がどの程度放出されるか、という3点を相互に関連づけ議論を行うことを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に実施予定であった15N18Oデュアルトレーサー測定法の確立について、一部未着手となったために未使用額が生じた。 次年度に15N18Oデュアルトレーサー測定法の確立を継続して進める予定であり、それに必要な物品費として使用する。
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