研究課題/領域番号 |
25550010
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
|
研究分担者 |
渡邉 敦 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00378001)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 物質循環 / リン / 酸素同位体比 / 沿岸海洋 / 生態系モデル |
研究実績の概要 |
1.前年に実施した造礁性サンゴのリン酸取込実験(交付申請書記載の平成25年度実施項目2)の実験試料の分析、データ解析を完了した。得られた成果を論文に取りまとめて2月に国際誌に投稿した(平成26年度実施項目5)。熱帯性海草類の取込実験の関しては、実験中の支障(台風等による)もあり、論文化するために十分なデータが得られておらず、追加実験を検討している。 2.前年度の3月にフィリピン大学臨海実験所において沿岸海洋堆積物からのリン酸の溶出実験を行い、溶出フラックスとリン酸酸素安定同位体比の定量のための試料を得た(平成26年度実施項目1)。このうちまず溶出フラックスの分析とデータ解析を進め、現場海域のリン酸の時空間動態と季節変動を記載する論文(平成26年度実施項目4)の一部としてデータを使用した。論文は現在執筆中で、近日中に投稿予定である。 3.9月にフィリピン大学海洋科学研究所において熱帯性微細藻類の培養実験を行い、微細藻類のリン酸の取込に伴う酸素同位体分別を定量するための試料を得た(平成26年度実施項目2)。分析は未了である。 4.流入河川と地下水のリン酸酸素同位体比測定(平成25年度実施項目4)に関して、火山灰土壌等に由来する河川水での追加試料の採集を1月に実施した。現在、最適な分析方法を検討している段階である。 5.沿岸生態系のリン酸の酸素同位体の変動を記述する同位体生態系モデル(平成26年度実施項目3)については、基礎データとなるリン酸酸素同位体比の分析作業がやや滞っていることから具体化が進んでいないが、関連する文献情報を整理してモデルの構成を決定している段階である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記した通り、当初に平成26年度に予定していた実施項目にすべて着手し、着実な実績を上げている。リン酸酸素同位体比の分析にやや遅れが出ていて、結果的にそれに依存する同位体生態系モデルの具体化も遅れているが、分析手法自体が新規性の高い、多くの試行錯誤を要するプロセスであることを考慮すると、この程度の遅延は予想される範囲内と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
本事業の成果として2番目の成果となるフィリピン沿岸海域でのリン酸の時空間動態に関する論文の執筆を早急に(4月中)完了し、5月以降は、遅延の見られるリン酸酸素同位体比試料の分析処理を急ピッチで進め、9月を目標に完了させる。得られるデータを利用して、同位体比生態系モデルの構築を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に予定していたリン酸の酸素安定同位体比の分析では、分析のための前処理の条件検討に多大な時間を要し、最終的な同位体比分析の段階にまで至った試料の数が予定よりもかなり少なくなった。これらの同位体比分析は次年度に実施される。本分析作業にかかる経費のかなりの部分は、最終的な同位体比分析における熱分解用グラファイト管等の購入に要するものであるため、結果的に多くの予算を次年度に持ち越すことになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度に分析しきれなかった多量の試料を本年度5月以降に精力的に分析する。この作業に必要となる熱分解元素分析計用各種消耗品、ヘリウムガス、交換用フィラメント等の購入のために前年度未使用となった予算を使用する。
|