研究課題/領域番号 |
25550012
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森本 昭彦 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 准教授 (80301323)
|
研究分担者 |
上田 拓史 高知大学, 総合科学系, 教授 (00128472)
滝川 哲太郎 独立行政法人水産大学校, 海洋生産管理学科, 准教授 (10371741)
山田 真知子 福岡女子大学, 文理学部, 教授 (30438303)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 低次生態系 / 東シナ海 / N/P比 / 長江希釈水 / 対馬暖流 |
研究概要 |
海洋中の窒素とリンの比(N/P比)の違いによる植物プランクトン、動物プランクトンの種組成の違いを把握するため、長崎大学水産学部練習船長崎丸により平成25年7月19~29日に韓国の排他的経済水域を含む東シナ海陸棚上の15測点においてクロロフィルa濃度が最大となる層での海水の採取、10測点でのプランクトンネットによる動物プランクトン採取を行った。また、15測点すべてで標準層での採水を行い、栄養塩分析のためのサンプリングを行った。クロロフィルa濃度最大層での海水は濃縮して持ち帰る顕微鏡により観察を行った。動物プランクトンサンプルはホルマリンで固定後、研究室に持ち帰り種の同定を行った。 観測海域におけるクロロフィルa濃度の最大層でのN/P比は0.5~32.8であり、予想していたレンジでN/P比が変化していた。長江希釈水とN/P比の関係をみると低塩分域でN/P比は低く、比較的塩分の高い場所で大きな値になっていた。動物プランクトンの同定結果をクラスター解析したところ、N/P比の小さい低塩分域とN/P比の大きい高塩分域では別の種が卓越していることが分かった。植物プランクトンの卓越種の分布をみると、低塩分域ではCoccoid nanoalgaが優先しており、比較的塩分が高く九州に近い測点では渦鞭毛藻が優先していた。全体的にみると、N/P比の比較海域では珪藻が、N/P比の高い海域では渦鞭毛藻が卓越しておりN/P比の違いにより種組成が異なっていることが分かった。植物プランクトンも動物プランクトンも、当初予想したように東シナ海陸棚上を流れる対馬暖流の上流から下流に向けて優先種が変わっていることがこの観測により明らかにすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定したとおり、東シナ海陸棚上において中国の長江の淡水を起源とする長江希釈水が分布する海域、時期に海洋観測を実施することができた。また、N/P比が大きく変化すると考えていた済州島付近での観測を実施することができ、実際にN/P比が0.1~32.8まで急激に変化していることを確認することができた。N/P比の異なる海域において植物プランクトン、動物プランクトンの採取を行い、すべてのサンプルの種の同定、優先種の確認を行うことができた。以上のように、平成25年度に行うべき観測、分析を予定通り実施できたことから本研究は順調に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の観測によりN/P比の違いにより、植物プランクトン、動物プランクトンの種組成が大きく異なっていることを明らかにすることができた。このような違いが東シナ海陸棚上の物質循環においていかなる意味を持つのかを調べるため低次生態系モデルを構築し解析を行う。対象海域の物理場はすでに数値モデルにより再現できているので、この物理モデルに低次生態系モデルを組み込む。ただし、いきなり複雑な物理場へ生態系モデルを組み込むことは難しいため、平成25年度の観測結果に基づいて、植物プランクトンを2種類(珪藻と渦鞭毛藻)、動物プランクトンを2種類(大型と小型)とし水平2次元の物理場でのモデルを動かし、生態系に係わる部分のパラメータ調整を行う。水平2次元で安定して計算できることを確認後3次元モデルに組み込み対馬暖流の上流から下流に向けてN/P比が急激に変化することが東シナ海陸棚上の物質循環に与える影響を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた水産大学校練習船天鷹丸での観測が、乗船者数の制限から一部実施できなかった。このため、天鷹丸の燃油費として計上していた予算の一部を使用しなかった。また、植物プランクトン色素を分析する機器の不調により一部のサンプルの分析ができなく、その分析費を繰り越した。 2014年の6月と8月に天鷹丸航海があり、本研究に係わる観測が実施されることが決まっており、その観測に必要となる燃油代を繰り越した予算で支払う。2014年度のサンプルと昨年度のサンプルの植物プランクトン色素を8月末までに分析する予定にしており、この分析に昨年度と今年度の予算を使う
|