研究課題
本研究の主目的である走査型透過X線顕微鏡(Scanning Transmission X-ray Microscopy)の開発を進めた。高エネルギー加速器研究機構Photon FactoryのBL13(1号機、主に200-1800 eVのエネルギー範囲)およびBL15(主に2000-5000 eVのエネルギー範囲)で2台の装置を開発した。後者はビームラインの建設が遅れているためまだ実際の分析はできていないが、前者ではおおよそ開発が一段落し、さらにエアロゾルへの応用を特に想定して、電子収量法による検出法の開発も行った。これらの手法開発を基盤として、平成27年度は実際の試料への応用研究を進めた。特にSTXMの30 nmに迫る高い空間分解能を活かし、エアロゾル1粒子ごとの化学種解析を進め、主に以下の結果を得た。(1)実際の応用研究に先立ち、エアロゾルへの応用を進めるために、試料周辺の手法の開発を行った。その結果、TEM用グリッドにサンプリングを行い、試料の採取位置を顕微鏡で確認した後で広い範囲でのマッピングを行うことで、容易に目的の試料位置に移動する手法を確立した。(2)その後、エアロゾル中の主にカルシウムの化学種解析をSTXMを用いて進めた。その結果、炭酸カルシウムがシュウ酸カルシウムに一部変化していることが、エアロゾル1粒子の直接的測定から明らかになった。特に粒子表面でこうした反応が起きていることから、大気中での反応でこうした変質が起きていることが示唆された。(3)炭素の電子収量法による分析から、海塩粒子の表面で疎水性の有機物のコーティングが生じていることが分かった。(4)硫酸エアロゾルについて分析を進め、1ミクロン以下の微細粒子では硫酸アンモニウムが主な化学種であることが分かった。一方で、1ミクロン以上では硫酸カルシウムが主な化学種であることが分かった。
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