研究課題/領域番号 |
25550015
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系, 教授 (90274357)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東南極氷床 / 鮮新世温暖期 / 珪藻 / ウィルクスランド / 国際情報交換 / 欧州(英国・スペイン) / 米国 / IODP Exp.318 |
研究概要 |
東南極のWilkes Land沖のcontinental riseで掘削されたSite U1361の上部中新統-下部鮮新統(65-150 mbsf)から得られた~60試料を用い珪藻群集解析を行った.定量スライドで原則100個体の珪藻化石殻を同定,Chaetoceros属の休眠胞子を別途数えた.生物源物質が多い間氷期堆積物と粘土分が多い氷期堆積物を区別し,両者における珪藻化石群集を比較することで,直前の間氷期に形成された堆積物の再利用化石(recycled fossil)か,異時的異地性化石(reworked fossil)かの判別を試みた. その結果,総計30種を超える珪藻化石が同定され,現在より温暖な海洋環境の存在が群集組成から示唆された.また量的変化はオパールやネオジウム同位体・ストロンチウム同位体と同調的で,5.3-3.3Maの温暖期にはWilkes Subglacial Basinがあらわになる東南極氷床のダイナミックな後退現象が繰り返されていたことが示された(Cook et al., 2013, Nature Geoscience).さらに(1)氷期と間氷期でよく似たパターンを示すタクサ群と(2)生物源物質が少ない氷期に増加するタクサ群が識別され,前者は再利用化石,後者は異時的異地性化石であることが示唆された. Site U1361は,南極底層水最大の生産拠点であるロス海の高塩陸棚水が沈み込み太平洋に流出する経路上に位置し,鮮新世温暖期における東南極氷床ならびに南極底層水の盛衰を示唆する実証的データが提示されたといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
氷河水の代替指標として期待される再堆積化石(異時的異地性化石)を,沈積粒子や再利用化石と判別することに成功するとともに,ネオジウム同位体やストロンチウム同位体の結果と整合性のあることが明らかにされた.成果の一部はすでにvan de Flierdt, T. 博士(インペリアルカレッジロンドン)らとの共著論文としてNature Geoscience誌上に公表されるとともに(Cook et al., 2013),積極的に口頭発表を行っている(岩井ほか,2013,国立極地研究所研究集会「南極海海洋循環を軸とした研究の新展開」;岩井,2013,極地研究所研究集会「ANDRILL参加に向けた国内準備集会」;岩井・小林,2014,第4回 掘削コア科学シンポジウム).加えて東南極氷床の盛衰に関する新知見を着実に積み重ねることができており,共著論文も結実している.しかし珪藻殻骨密度評価法は未着手であることから,「概ね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
(1)サーマル電解放出形操作電子顕微鏡(FE-SEM)を利用し“化石骨密度指数”を設定,珪質微化石の保存度評価法開発にチャレンジする(珪藻骨密度計測技術確立). (2)氷期・間氷期の特性を時系列で明らかにし,磁化特性やその他指標等との関係をしらべ,東南極ウィルクスランド沖における南極底層水(AABW)の起源と生成量評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
国際学会発表(AGU fall meeting, San Francisco)と共同研究者との打ち合わせを予定していたが,学内の諸事情により学会に参加できず,発表・打ち合わせを延期した. 4月下旬から5月上旬にかけてEGU2014(Austria Center Vienna in Vienna, Austria)に参加,成果発表するとともに共同研究者との打ち合わせを行う.繰り越した30万円は,学会参加費・旅費として使用.
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