研究実績の概要 |
【最終年度】前年度までに得られたSite U1361の珪藻化石群集と磁化特性等との比較検討を行い,再堆積化石の増加は酸化的な環境を示唆する磁赤鉄鉱(マグヘマイト)の産出と調和的であることを明らかにした.再堆積化石が酸素に富んだ南極底層水の指標となることを示唆する. 【期間全体】本研究では,氷期・間氷期を区別した上で珪藻化石群集の時系列データを比較検討することで,異質岩体からの「再堆積」と直前の間氷期に生産された表層堆積物の「リサイクル」とを識別することに成功した.「再堆積」の起源物質は調査地域周辺に現在存在しておらず,「鮮新世の温暖期に東南極氷床が大規模に後退したとするネオジウム同位体組成分析結果や帯磁率異方性(AMS)の知見と調和的である. 【具体的な内容】Site U1361の珪藻化石群集を氷期・間氷期に判別し,帯磁率異方性(AMS)ならびに他の堆積物諸物性との比較検討を行った.その結果,珪藻産出量が多い層準(間氷期)では帯磁率異方性が等方的で磁性鉱物としては磁鉄鉱(マグネタイト)が卓越し,珪藻が少なく粘土が多い層準(氷期)では異方性が高くより酸化的な環境を示唆する磁赤鉄鉱(マグヘマイト)が卓越する傾向であることが明らかになった(Tauxe et al.,2015).氷期には珪藻全体の産出量は減少するものの,再堆積化石の産出頻度はむしろ増加し,底層流の活性化が示唆される.堆積物磁気特性の分析結果はこれに調和的である.また陸棚上で掘削されたSite U1358下部も5.12-4.4Ma(前期鮮新世)の年代が得られ,堆積物の微細構造観察から,氷床の拡大縮小が繰り返されていたことが明らかにされた(Reinardy et al.,2015). 【意義・重要性】近未来の地球温暖化のアナログとして注目される鮮新世温暖期において,東南極氷床がダイナミックに挙動した証拠を示すことに成功した.
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