研究課題/領域番号 |
25550017
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
張 代洲 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (90322726)
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研究分担者 |
柿川 真紀子 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10359713)
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境変動 / 大気現象 / バイオエアロゾル / 黄砂 / 浮遊微生物 / 東アジア |
研究概要 |
本研究では,黄砂に関わる微生物の定量評価を目的とし,黄砂を介した微生物の拡散を正確で効率的に評価できるアプローチを提供する.平成25年度には、粒径別黄砂粒子のフィルターサンプル中の微生物の付着実態とその生死状態を定量評価する方法を開発,並びに,黄砂粒子のみに含まれる微生物の遺伝子配列を解析した.また,熊本市において,上記の方法で浮遊粒子に関わる微生物の計測と同定の試験調査を行った. 方法の開発においては,LIVE/DEAD染色計数法を用いて粒径別黄砂粒子のフィルターサンプル中の微生物の付着実態とその生死状態を定量評価する染色計数法を確立した.当初では透析式染色法と計画したが,染色液の透過性を検証した結果,市販品には適用のフィルターがなかった。そのため,粒径別の粒子サンプルをバッファー液に下して,染色計数を実現した.従来の透過式フィルターサンプル(トータル粒子サンプル)をコントロールとして微生物の総数とその生死状態を照り合わせて検証した結果,ほぼ一致したことが確認され,バッファー液を利用して粒径別粒子サンプル中の微生物の染色と計数が充分可能であることを立証した.黄砂粒子のみのサンプル作成では個別粒子を孤立させることは実現されたが,微生物の分離方法は検討中である. 試験調査においては,熊本市内での試験調査は終了した.粒径別黄砂粒子のフィルターサンプル中の微生物の数濃度と生死状態の調査を行うために,平成26年3月下旬に熊本県天草半島の西海岸で確立された方法を利用して本格的な調査を開始した.3月の集中観測期間中に採集されたサンプルは現在分析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
粒径別黄砂粒子のフィルターサンプル中の微生物の付着実態とその生死状態を定量評価する方法の開発は予定より早く,使用して観測を実施する段階に進んできた.平成26年3月の集中観測の結果から黄砂粒子に付着している微生物と付着していない粒子の区別について初期段階の結果が得られた.平成26年度に実施する調査に独創的な成果が得られる見込みがある.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,次のように当初計画のとおりに本研究を推進する予定である. 1. 観測と分析:春季に天草西海岸において,夏季には中国砂漠地域において黄砂サンプルを採集し,確立された微生物の分析方法を利用して,黄砂粒子表面に付着して拡散している微生物及びその生存状態について定量的に計測する。 2. とりまとめと社会への発信:得られたデータから,黄砂に伴って東アジアの広域に拡散している微生物の拡散実態とメカニズムの解明に新しい知見をまとめる.学術討論会や講義及び公開講座を通じて,本研究の結果を発信し,学術論文として専門雑誌に投稿する. 3. これまでの研究成果を踏まえ,本研究で確立された方法及びその知見に基づいて,東アジアにおけるバイオエアロゾルの長距離拡散の実態解明を目指して新たな国際共同研究を提案する.大気を介した微生物の広域拡散について自然環境の進化中の働きと病原菌類の陸間移動の実態とメカニズムの解明に独創的に推進し続ける.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の調査対象が黄砂などの越境拡散の大気汚染物質であり、最も適な観測時期は毎年の3月~5月である.平成26年3月下旬(会計年度の末)に実施された観測に要した旅費と人件費などの事前精算は困難であったため、概算額を上回る額を準備して観測を実施した。そのため、少々の残額は生じた。 残額は次年度の物品費に充当する。
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