研究課題/領域番号 |
25550017
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
張 代洲 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (90322726)
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研究分担者 |
柿川 真紀子 金沢大学, 学内共同利用施設等, 助教 (10359713)
松崎 弘美 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (30326491)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境変動 / 大気現象 / バイオエアロゾル / 黄砂 / 浮遊微生物 / 東アジア / 陸間移動 / 微生物生態系 |
研究実績の概要 |
本研究では,黄砂粒子に関わる微生物の定量評価を目的とし,黄砂を介した微生物の拡散を正確で効率的に評価できるアプローチを提供する.研究期間中には,LIVE/DEAD染色計数法を用いて粒径別黄砂粒子中の微生物の付着実態とその生死状態を定量評価する方法を開発,並びに,黄砂粒子に関わる微生物の遺伝子配列の解析方法も確立した.試験調査は熊本市において行った.熊本県天草半島西岸,中国沿岸都市青島市,中国北西部テンゲリ砂漠において,上記の方法を利用して黄砂などの浮遊粒子に関わる微生物の計測を行った. 高気圧・前線前・大陸性寒気団・高気圧接近の4つの天気パターンに分類し,浮遊粒子の粒径に対する生菌・死菌の分布を求めた.空気中にはおよそ1万~10万cells/m3の総菌数が常に存在していたが,高気圧において,総細菌の約83%が単体で浮遊していると推察され,その生存率は74%であった.また,前線前における総細菌の約56 %が単体で浮遊していると推察され,その生存率は88%であった.一方,大陸性寒気団においては72%の細菌が粒子状物質の表面に付着し,その生存率は50%以下であった.これらの結果から,高気圧や前線前においては,単体で浮遊している観測地周辺域由来の細菌,大陸性寒気団や高気圧接近時においては,粒子に付着して長距離輸送される細菌が主であることがわかった. このような細菌濃度の変動は,より都市域である熊本市における観測でも得られており,九州西岸地域における細菌の生存率の変化は低気圧/高気圧の通過に伴う大陸性気団の入れ替わりが左右していることが明らかになった.また,気団の動きが少ない高気圧時には沿岸域特有のローカルな気象現象である海陸風の形成が見られ,この風の変化も細菌濃度の日変動に影響していることが示唆された. その他の観測で得られたサンプルの分析は、平成27年4月現在進行中である.
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