研究課題
挑戦的萌芽研究
最終的な研究目的は、放射線被ばく事故・災害時のトリアージにも応用可能な非侵襲的検体を用いた簡便且つ精確な生物学的放射線被ばく線量測定・リスク評価技術の開発である。特に放射線被ばくにより尿中に特異的に検出される新たな分子を同定し、その分子を用いた生物学的線量評価法を開発することを目標としている。平成25年度はB6C3F1マウスにγ線全身照射を行い、照射前、照射後、継時的に採尿を行った。これまでにペプチドマスフィンガープリンティングと呼ばれる手法を用い、尿中adipsinタンパク質に修飾される糖鎖が放射線被ばくにより切断を受けることがわかっていたが、この現象が0.25 Gy以上の被ばく線量で観察され、被ばく後、48時間程度まで観察されることが明らかとなった。一方で0.05や0.1 Gyでは尿中adipsinの糖鎖切断は引き起こされないことが示唆された。また、これまでにhepcidin-2ペプチドが放射線被ばくしたマウス尿中で増加することを見いだしており、それは肝臓におけるhepcidin-2遺伝子発現の変化が起因となることが示唆されている。放射線被ばくでは一般的に急性期反応が起こるとされており、肝臓での遺伝子の変化との関連が示唆されている。肝臓での急性期反応に関わる遺伝子発現を検討したところ、metallothionein 1遺伝子が放射線被ばくで増加する傾向にあることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
見いだされた分子の線量依存性などの解析は順調に進んでいる。また、同様にその分子の変化メカニズム解析についても順調に進んでいる。
尿中放射線被ばく応答因子の同定はたんぱく質、ペプチド、代謝産物などさまざまな角度から試みる必要があるため、来年度も継続して精力的に行う予定である。糖鎖修飾の変化は不明な点が多く残されているので、この解析も同様に進める予定である。
前述の通り、本研究課題はおおむね順調に進展しており、当初、計画していた実験動物や生化学的・分子生物学的試薬を効率的に使うことが出来たため残額が生じた。前述の研究を遂行するために、マウスなどの実験動物や生化学的・分子生物学的試薬が必要になるため、購入予定である。研究の進捗状況によっては、当初予定していなかった試薬等が必要になるため、柔軟に対応する予定である。得られた成果を発表するために、学会参加が必要となり、最終的には論文として出版する必要があるため、それにかかる経費としても使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (17件)
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