細胞死を誘導する細胞内情報伝達経路の阻害を基本原理として,放射線防護剤のハイスループットスクリーニングを目指した。まず、東京大学創薬オープンイノベーションセンター(現東京大学創薬機構)から9600種の低分子化合物を包含するコアライブラリーを入手した。次に,53BP1フォーカスを指標にしたライブセルイメージングシステムを用い,蛍光標識された53BP1融合蛋白質を発現する細胞を、細胞分注機(Rapidstak/Multidrop Combi)を用いて384穴プレートに播種、翌日、細胞照射1時間前に、化合物希釈・分注機(EDR-384SX)によりライブラリーを希釈、化合物分注機(Rapidstak/Multidrop Combi)により384穴プレートに培養された細胞の培養液に添加した。入手したコアライブラリーは、10mMの濃度で分注されているため、細胞に作用させる場合には、10μMに希釈して阻害効果を評価した。化合物添加後、3Gyのγ線を照射し、照射24時間後にプレートを取り出して、IN Cell analyzer2000により、平成25年度に構築したプロトコールにより画像解析を行い、53BP1フォーカス形成のライブセルイメージング解析を実施した。陽性コントロールとして用いた、ATMの特異的阻害剤であるKU55933では、検討した濃度域(1μM~40μM)で濃度依存的な53BP1フォーカス形成の抑制を確認し、評価系の有用性を確認した。平成26年度終了時までに、9600種のコアライブラリーのスクリーニングを終了し、放射線による53BP1フォーカス形成を抑制する候補化合物の探索を完了した。
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