研究課題
本研究では、食物アレルギーを誘発もしくは増悪しうる化学物質を簡便にスクリーニングできるin vitro検出法の構築を目的として、腸管上皮粘膜組織の生体防御システムに着目し、簡易且つ高精度なin vitro検出法の開発を試みた。まず、膜電気抵抗値(TER)を指標として、Caco-2単層膜に被検物質をapical側から添加し、TER値を測定し、バリア機能の破綻能の有無を評価した。TER値と細胞層のバリア機能とには強い相関関係があり、TER値の低下は細胞間に隙間で出来ていることを示す。ダイオキシン類やPAHsを添加すると、添加時間依存的なTER値の低下が観察された。次に、in situループ法を用いたバリア機能評価についても試みた。具体的には、マウスの腸管ループ内にFD-4 (1 mg) と被検物質との混合液を投与したときの血中デキストラン量を測定した結果、1時間目においてvehicle投与 (DMSO; 対照) では2.3 μg/mLであったのに対して、TCDD投与では4.4μg/mL、またB(a)P投与では2.9 μg/mLであった。さらには、モデル抗原を用いたTh1及びTh2応答性に関して、E.G7-OVA細胞をOVAで刺激すると、IL-4のmRNA量が増加したものの、その増加率は僅かなものであったのに対して、ヒトT細胞由来細胞株であるHPB-ALL細胞を用いた検討では、OVA刺激によりIL-4及びIFNγのmRNA量の著しい増加が観察された。さらに、OVA存在下でHPB-ALL細胞をダイオキシン類で刺激した時に、OVAにより増加したIL-4のmRNA量が飛躍的に増加するのに対して、IFN-γのmRNA量は減少することを観察した。従って、本研究成果は、バリア機能及び免疫賦活化能を同時に評価可能なハイブリッド式検出法の構築のための基礎的知見となり、今後さらなる改良を加えることで、in vitro検出法の開発に繋がるものと確信された。
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