研究課題
挑戦的萌芽研究
水環境中で検出される医薬品類や化粧品等のパーソナルケア製品(PPCPs)による生態影響が問題視されており、特に魚類などの水棲生物は慢性的な影響を受ける可能性がある。魚類における慢性毒性影響のエンドポイントとして、産卵数の減少や受精率の低下が知られており、エストロゲン受容体(ER)の機能と密接な関連がある。しかしながら、ERとPPCPsの相互作用を網羅的に調査した研究はほとんどない。本研究では、in silicoで魚類ERαの立体構造を予測し、PPCPsとの結合状態を解析した。まず分子シミュレーションソフトウェアを用いて、メダカ、ゼブラフィッシュ、ローチ、コイ、ファットヘッドミノーおよびイトヨのERαリガンド結合領域の立体構造モデルを予測し、ドッキングプログラムASEDockを用いて79種類のPPCPsとの結合ポテンシャルエネルギーを算出し結合状態を解析したところ、各魚種のERαに対してエストロゲン類(17β-estradiol、estriol、estrone)は高い結合親和性を示した。また、更年期障害の治療目的にホルモン補充剤の医薬品として使用されるエクイリンなどのエクイン類は、エストロゲン類と同程度の高い結合親和性を示した。さらに一部の魚種のERαに対して、鎮痛剤/抗炎症剤indomethacine、脂質低下薬bezafibrate、βブロッカーmetoprololなどは比較的高い結合親和性を示した。PPCPsの相互作用ポテンシャルエネルギーのERα間比較において違いのみられたメダカ、コイおよびイトヨについて、PPCPsとの相互作用に関与するアミノ酸の推定を試みた。ステロイド骨格を有するエストロゲン類およびエクイン類とその代謝物、あるいは他のPPCPsについて相互作用に関与するアミノ酸を明らかにした。また、それらの種類や距離はERα間で異なることが示唆された。以上のことから、in silicoスクリーニングによりPPCPsのエストロゲン様作用が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
In silicoでメダカ、ゼブラフィッシュ、ローチ、コイ、ファットヘッドミノーおよびイトヨのERαリガンド結合領域の立体構造モデルを予測し、PPCPsとの結合状態を解析した。結果として、各魚種のERαに対してエストロゲン類(17β-estradiol、estriol、estrone)は高い結合親和性を示した。また、更年期障害の治療目的にホルモン補充剤の医薬品として使用され、妊娠中の牝馬の尿中にも含まれているエクイリンなどのエクイン類は、エストロゲン類と同程度の高い結合親和性を示した。さらに一部の魚種のERαに対して、鎮痛剤/抗炎症剤indomethacine、脂質低下薬bezafibrate、βブロッカーmetoprololなどは比較的高い結合親和性を示した。PPCPsの相互作用ポテンシャルエネルギーのERα間比較において違いのみられたメダカ、コイおよびイトヨについて、PPCPsとの相互作用に関与するアミノ酸の推定を試みたところ、ステロイド骨格を有するエストロゲン類およびエクイン類とその代謝物、あるいは他のPPCPsについて相互作用に関与するアミノ酸を明らかにした。また、それらの種類や距離はERα間で異なることが示唆された。以上のことから、in silicoスクリーニングによりPPCPsのエストロゲン様作用が明らかとなった。
魚類では、複数のエストロゲン受容体(ER)の存在が確認されている。今後は、ERα以外についても対象として、リガンドの相互作用についてドッキング シミュレーション解析を行う。さらにERsの機能性は、化合物とERsの結合親和性だけでは十分に評価できない。ERsアゴニストは生体内に侵入後、ERsを介して様々な標的遺伝子の転写を促進あるいは抑制することで機能を発揮するからである。そこでERs cDNAクローンを用いたin vitroレポーター遺伝子アッセイ系により、ドッキングシミュレーション解析により 得られた候補化合物を対象としてERs転写活性化能を測定する。
当初計画していた人件費・謝金の執行において、最適な人材が確保できなかったため。人材派遣会社等を通じて最適な人材を確保する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 図書 (2件)
Journal of Environment and Safety
巻: 4 ページ: 印刷中
Toxicological Sciences
巻: 131 ページ: 116-127
10.1093/toxsci/kfs288
Japanese Journal of Food Chemistry and Safety
巻: 20 ページ: 22-30