研究課題
魚類エストロゲン受容体(ER)サブタイプに対する医薬品類・化粧品等パーソナルケア製品(PPCPs)の影響を一斉スクリーニングするため、メダカERα、ERβ1およびERβ2のリガンド結合領域(LBD)の立体構造モデルをin silicoで構築し、PPCPsとのドッキングシミュレーション解析を試みた。まず、ドッキングシミュレーション解析で得られた各ER-LBDと17β-estradiol(E2)の結合位置と構造が、X線結晶構造解析で実験的に得られたものをどの程度再現しているかを確認するため、X線結晶構造の報告されているヒトERα-およびERβ-LBDタンパク質と比較した。メダカの各ERサブタイプにおいて算出されたRMSDは1オングストローム以下を示し、本研究で構築したERサブタイプの立体構造モデルは正確に予測できたと考えられた。次に、PPCPsとの相互作用をスクリーニングしたところ、一部の医薬品成分や内因性エストロゲン類であるestrone、17α-E2、17β-E2およびestriolは各ERサブタイプに対して高い結合親和性を示した。そこで、開発したin silico系の有用性を検証するために、in vitroレポーター遺伝子アッセイ系を用いてERα依存的転写活性化能を測定したところ、in silico系で確認されたリガンド-ERα分子間相互作用の強弱と同様にERαも活性化され、本スクリーニング手法の有用性が示された。さらに、リガンドとの相互作用に関与する各ERサブタイプのアミノ酸の推定を試みたところ、リガンドによって相互作用に関与するERサブタイプのアミノ酸の種類や数は異なり、水素結合の有無やリガンド-ER間の距離も異なっていた。以上のことから、メダカERサブタイプに対するPPCPsのエストロゲン様作用が明らかとなった。本研究で開発したin silico試験系は、PPCPs-ER分子間相互作用のスクリーニング手法として極めて有用であり、PPCPsのリスク評価ツールの一つとして活用されることが期待される。
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Journal of Applied Toxicology
巻: in press ページ: in press
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Endocrinology
Chemosphere
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doi:10.1016/j.chemosphere.2014.08.066
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