研究概要 |
イヌ試料27検体(オス18検体、メス9検体)の肝臓、腎臓および、ドッグフード20種(ドライタイプ10種、ウェットタイプ10種)における27元素(Li, Mg, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn, Ga, As, Se,Rb, Sr, Mo, Ag, Cd, In, Sn, Sb, Cs, Ba,Hg, Tl, Pb, Bi)を化学分析に供試した。 ドッグフードの安全性評価を実施した結果、ペットフード安全法の上限値が設定されているAs, Cd, Pb濃度は、すべてのペットフードで下回り、法律上安全であることを確認した。上限値が設定されていはいないが、毒性の強い元素であるHg濃度を測定した結果、キャットフードと比べて有意に低く、検出限界値未満の試料も存在した。 生物における化学物質のおもな暴露源は食餌や生息環境であり、そのレベルは体内濃度に反映する。従って、イヌの体内Hg濃度はネコよりも低値を示すことが予想された。そこで、肝臓および腎臓中の水銀レベルを比較した。その結果、肝臓では有意差はみられなかった一方、腎臓においてイヌで有意に高値を示した。この事実は予想に反する結果となり、イヌのHg暴露源はエサだけではなく、それ以外のものの存在が示唆された。さらに他の陸上野生哺乳類と比較した結果、イヌネコのHgレベルは相対的に高値であった。このことから、ペット動物であるが故のHg暴露源の存在が示唆された。 また、イヌとネコにおける微量元素の蓄積特性を比較した結果、イヌは多くの元素を腎臓に、ネコは脳に蓄積する特徴を有することが示された。このことは、イヌにおける腎障害やネコにおける中枢神経障害のなりやすさを示す可能性がある。
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