研究課題/領域番号 |
25550047
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
青野 重利 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (60183729)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センサータンパク質 / ヘムセンサー |
研究概要 |
本研究では、重金属汚染の有無を簡便かつ高感度に判定するシステムの開発を目的として研究を行う。重金属が存在する場合にのみ選択的に何らかのシグナルが発生するプローブ分子があれば、重金属の存在を選択的に検出することが可能である。そこで本研究では、重金属結合タンパク質中に存在する重金属結合モチーフと蛍光タンパク質を構成要素とする、FRET型蛍光プローブの設計・合成を目的として研究を行った。本年度は、効率的な重金属イオンセンサーモチーフを選択するため、各種細菌中で重金属イオンセンサーとして機能すると考えられている一連の転写調節因子の発現・精製系に関する検討を行った。その結果、Streptococcus pneumoniae中に含まれ、亜鉛センサーとして機能すると推定される転写調節因子SczA、およびLactococcus lactis中に含まれ、ヘム(鉄ポルフィリン錯体)センサーとして機能すると推定される転写調節因子HrtRの発現・精製系を確立することに成功した。 大腸菌で発現したSczAの精製を行ったところ、SczAは鉄硫黄クラスターに特徴的な電子吸収スペクトルを示した。通常の条件下で精製を進めた場合、鉄硫黄クラスターに基づく吸収は次第に消失したことから、SczA中の鉄硫黄クラスターは、酸素に対して不安定であり、鉄硫黄クラスターの分解反応が進行していると考えられる。 HrtRはホモダイマーとして存在しており、各サブユニット中の2つのヒスチジン(His72とHis149)がヘム軸配位子として機能することにより、ヘム分子をセンシング・結合することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率的な重金属イオンセンサーモチーフ設計の鍵となる二種の金属イオンセンサータンパク質の発現・精製系の確立に成功している。さらに、そのうちの一つであるHrtRタンパク質については、金属錯体センシング・結合反応に関与する金属イオン配位子の同定にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
亜鉛センサーとして機能すると推定していたSczAが、鉄硫黄クラスターを結合しているという予期せぬ実験結果が得られた。SczA中に結合している鉄硫黄クラスターは、酸素に対して不安定であり、現時点では鉄硫黄クラスター結合型SczAを安定に精製し、その詳細な性質を解明するにはいたっていない。今後は、嫌気条件下で精製を進めることにより、精製途中での鉄硫黄クラスターの分解を回避し、鉄硫黄クラスター結合型SczAの精製標品を得て、その構造・機能の解明を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
亜鉛センサーとして機能すると推定していたSczAが、鉄硫黄クラスターを結合しているという予期せぬ実験結果が得られたため、当初予定していた亜鉛タンパク質としてのSczAの精製、機能解析の実験を変更する必要が生じたため。 当初の計画で予定していた使途に加え、酸素に対して不安定な鉄硫黄クラスター結合型SczAを精製するためのタンパク質精製用試薬の購入、およびSczAの構造解析のためのタンパク質結晶化用試薬の購入に使用する。
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