研究課題/領域番号 |
25550050
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 公紀 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (40114376)
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研究分担者 |
雨宮 隆 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (60344149)
中島 啓光 横浜国立大学, 環境情報研究院, 研究教員 (60399409)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分相性ポーラスガラス / Csイオン / イオン交換 / 放射能除染 |
研究概要 |
福島の原発事故に伴う放射性セシウム汚染に対処するには、高度な除染システムと、それを支える有効な吸着剤が必要である。我々が最近見出した知見によれば、ほぼ純粋なシリカからなり、数十ナノメーター径の連続細孔を持つ分相性ポーラスガラス(PG)の内表面は、Csイオンに対する選択的吸着性を示す。さらに汚染水の濾過や、放射性物質の閉じ込めにも適していると考えられる。本研究では、このような分相性PGの特徴に基づいて、土壌と水を汚染している放射性物質の除染システム構築と適用のための検討を行う。具体的には、分相性PGの物性、吸着特性、他吸着剤との比較、セシウム閉じ込め処理、等の基礎的検討と共に、現場への適用を想定したシステム構築を行い、予備的実施を行うと共に、課題を検討することを目的とする。 本年度は、特にCsイオンの吸着能に着目した検討を行い、以下のような結果を得た。 まず、純粋SiO2等と比較してCsイオンに対する大きな吸着能が示された。妨害イオンの効果を検討したところ、模擬海水使用時でも、実用上十分な選択性が示された。 元素分析の結果、SiO2マトリックス中に分散したAlが、酸性度を高めていることが示唆され、ポア中の残留ゲルの特性が重要であることが判明した。従って、Alを含まない母材ガラスから作成した分相性ポーラスガラスは、ポア中残留ゲルがあってもCsイオンに対する選択性を示さないことが予想されるが、これは実験的に確かめられた。 ゼオライトとの比較したところ、吸着能はほぼ同等であり、濾過性能は格段に高かった。実際、ゼオライトは水に浸漬すると膨潤し、濾過速度が極めて遅かったが、分相性ポーラスガラスは高い濾過速度を保った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の「空孔径・空孔率の測定」、「BET法による表面積測定」、「微量成分測定」、「吸着特性」、「濾過特性」など、分相性ポーラスガラスの特性評価は順調に進展し、論文執筆に至った。 特に、吸着特性評価において、Csイオンに対する選択性の原因として、ポア中の残留ゲルの特性が重要であることが判明したことが特筆される。元素分析の結果、SiO2マトリックス中に分散したAlが、酸度を高めていることが示唆された。 一方、汚染現場に対する除染システムの構築に関しては、まだ情報収集に留まっている。一つの理由として、行政主導の除染計画が進展していないことが挙げられる。 これらの要素を勘案して、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ポア中の残留ゲルの特性が重要であることが分かったので、例えばゾルゲル法により残留ゲルをモデル化した材料を作成して、比較検討する。 また、残留ゲルの酸度を高める手法して、Al以外にも、TiやMoなどを導入することが有効である可能性を考え、母材ガラスの成分を調整する計画である。ゾルゲル法によりポア中で吸着能の高い酸化物を合成することも可能であろう。実際、プルシアンブルーをポア中で合成し、内壁を被覆することに成功している。 また、酸度の定量化を行うなど、特性評価を精密化させることも重要であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
ポーラスガラスの特性評価の効率が良く、原料の使用量が予定よりも小さかったため。 次年度使用額については、主として走査プローブ顕微鏡コントローラーのバーションアップに用いる予定である。
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