研究課題
挑戦的萌芽研究
1.汚染土からの放射性セシウムの遊離汚染土を福島県より入手し、土壌に結合した放射性セシウムの遊離を試みた。まず、酸性溶液による遊離を確認するため、後述する温泉藻Galdieriaの培地(pH 2.5)で処理したが、十分な遊離は確認されなかった。また、培地のpHを1.0まで変化させたが、効果は無かった。そのため、現在、酸処理と同時に高温や高圧等の物理的処理を加えての遊離を検討している。2.遊離した放射性セシウムの微細藻類を用いた吸収と減容<温泉藻Galdieriaによる放射性セシウムの吸収>本藻のセシウム吸収に関する栄養条件を検討したところ、グルコース添加下で光を当てた条件(混合栄養)で最も吸収が見られ、光のみ(独立栄養)やグルコースのみ(従属栄養)ではほとんど吸収されなかった。また、pH 5.5よりpH 2.5での成育でよりセシウムが吸収されたことから、汚染土からのセシウム遊離において酸処理が必要な場合、本藻の適用が有効であることが示唆された。<高度セシウム吸収藻nak 9による放射性セシウムの吸収>本藻のセシウム取り込みに関して、カリウムイオンと競合し、凍結乾燥標品や低温および暗黒下では吸収されなかったことから、セシウムは細胞表面への吸着ではなく、細胞内への能動的な吸収であることが分かった。本藻の増殖では、光条件、温度条件、pH条件、塩濃度などいずれも広範囲の生育条件でも高い成育能を示した。このことは本藻の生育においては成育環境を厳密にコントロールする必要が無い、すなわち本藻を用いることで、エネルギーの投入が最低限で済み、低コストの除染が可能となることが明らかとなった。また、本藻はカリウム欠乏に対しても極めて耐性が高く、カリウム無添加の培地で継代培養しても、増殖がコントロールとほとんど変わらなかった。このことも本藻利用のアドバンテージであることが分かった。
3: やや遅れている
温泉藻や高度セシウム吸収藻を用いた遊離セシウムの吸収については順調に研究データが得られているものの、土壌からの放射性セシウムの遊離については、まだ条件が確立されていないため。
1.汚染土からの放射性セシウムの遊離バイオリーチングを含めた生物を用いたセシウムの遊離を検討すると共に、加圧装置等を用いることで、物理的、化学的手法を組み合わせた抽出方法を早急に検討する。2.遊離した放射性セシウムの微細藻類を用いた吸収と減容高度セシウム吸収藻nak 9の100 L規模の大量培養系を確立する。
培養や株の維持や試薬調整のために実験補助員の雇用を予定していたが、適材を見つけることが出来ず、予定していた人件費・謝金について次年度使用額が生じた。引き続き実験補助員等の募集をすると共に、人的リソース不足をカバーするための既製品購入や自動計測装置等の導入を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Plant Research
巻: 127 ページ: 79-89
10.1007/s10265-013-0596-9