研究課題
本研究においては、東日本大震災時の福島第一原子力発電所の事故により拡散された放射性セシウム(Cs)をプロティストを用いて低コストの抽出、吸収および減容の手法を開発することを目的とした。汚染土からの放射性Csについては、低コストの化学溶媒として福島県沼尻温泉から採取した酸性温泉水(pH 1.9)を検討し、物理化学的処理として電気浸透法と亜臨界水処理法を検討した。電気浸透法については、際だった効果は認められなかった。一方、亜臨界水処理では、マイカやゼオライトに吸着させたCs-137を温泉水で処理したところ、マイカで約60%の遊離が確認された。そこで福島県南部で採取した汚染土において亜臨界水処理の効果を確認したところ、抽出に用いた純水、3% 過酸化水素水、温泉水、4%硫酸いずれにおいても、未処理を行わなかった試料に比べて2倍以上の抽出効率が得られることが分かった。また遊離性の放射性Csの吸収については、新規真正眼点藻Vacuoliviride crystalliferumを見出し、本藻が6 mg Cs-137/mg Chl/hという極めて高いCs吸収能力を有することを明らかにした。本藻のCs吸収の親和性は50 nMであり、極めて微量でも吸収可能であることが分かった。更に、暗黒下や低温下ではCsが吸収されないことなどから、能動的な吸収であることが示唆された。また、本藻は光、pH、塩濃度のいずれにおいても広い環境条件下で増殖した。このことは培養条件設定にエネルギーを要しないことを示しており、本藻は低コスト回収システムの実現に重要な役割を果たすものと考えられる。以上より、本研究により汚染土を酸性温泉水などの酸条件下で亜臨界水処理した後、遊離した放射性CsをV. crystalliferumで吸収させることで低コストの抽出、吸収および減容が可能となることを明らかにした。
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