研究課題/領域番号 |
25550061
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飛野 智宏 東京大学, 環境安全研究センター, 特任研究員 (90624916)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 遺伝子捕捉反応 / Gene capture metagenome / 環境遺伝子 / 遺伝子多様性 |
研究概要 |
本年度は方法の確立を目的とし、試料の準備や操作手順の最適化を進め、人工遺伝子プールに対して適用し、評価した。 1)人工遺伝子プールの準備:操作手順の確立を進めるために、評価用サンプルの準備を進めた。標的遺伝子にはアンモニア酸化遺伝子(amoA)を選んだ。活性汚泥試料より抽出したゲノムDNAからamoAを標的としたPCR、クローニングを経て得られたクローン配列から、既知のamoA遺伝子の多様性を広くカバーするクローン配列10個を選出した。また、バックグラウンドDNAとして大腸菌ゲノムDNA断片を調整した。標的遺伝子およびバックグラウンド遺伝子に異なるアダプター配列を接合し、組成、濃度が既知の遺伝子プールを作成した。 2)遺伝子プローブの設計:遺伝子データベースよりアンモニア酸化細菌として報告のある分離株由来のamoA遺伝子配列を入手し、その中で配列保存性の高い領域を探索し、遺伝子捕捉プローブ配列とした。 3)遺伝子捕捉反応:1)と2)で調整した試料を用いて、遺伝子捕捉反応を行った。標的遺伝子の集積度および集積バイアスの評価には、定量PCRおよびTerminal Restriction Fragment Polymorphism(TRFLP)法を用いた。変性剤濃度によって集積度や集積バイアスの程度が異なる結果が得られた。今回試験した範囲では、最大1000倍程度の集積度が得られること、変性剤濃度が高い場合には大きな集積バイアスが存在するが、変性剤濃度を低くすることで集積バイアスを低く抑えられることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は基礎的検討を目的としており、基本操作手順の確立や最適化等、細かな部分の検討が必要であった。考えられる全ての条件を広く試験することは時間的に不可能であったが、人工遺伝子プールに対して捕捉反応を行い、集積度や集積バイアスを確認することができた。当初の計画に沿っておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、実際の環境試料に対して適用する。今年度までに得られた知見をベースとして進めるが、基礎的な部分、特にプローブ配列設計や選定部分でまだ工夫する余地がある。プローブ設計・選定が適用結果に大きな影響を与えるため、当初の計画通り環境試料への適用準備を進めると同時に、可能な限り並行して基礎的部分を詰めていく予定である。また、適用対象は当初予定していた遺伝子配列にこだわらず、発展性の高い対象があれば柔軟に変更する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は人工遺伝子プールの準備に、多数の環境遺伝子クローンを調整し、その中から選出するプロセスに費用がかかると考えていたが、配列選定手順に工夫を行うことで予想より少ないクローン数から目的とする配列を得ることができた。また、従来法によるDNA配列解析を低価格で受託する企業が現れたことにより、費用を予想以上に節約できた。また、操作手順上、一度に行う遺伝子捕捉試験数に予想よりも制限があることが分かり、条件数を当初設定していたほど増やせなかったため、必要な消耗品費が抑えられた。以上が主な理由である。 次年度では高速シーケンサーを用いた受託解析を予定しており、1回の解析で数十万円程度の費用が発生する。次年度に繰り越せた分により解析可能な試料数が増えるため、適用対象数の増加や反応条件の違いによる影響の評価等、より研究の自由度を増すために活用する。
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