今年度は、昨年度までに作成した10種類のamoAクローン配列から構成されるモデルコミュニティを用いて、遺伝子捕捉反応条件の検討を進めるとともに、短鎖オリゴヌクレオチドプローブと長鎖1本鎖DNAプローブによる捕捉性能の違いについて検討を行った。また、環境試料に対して手法の適用を試みた。 オリゴヌクレオチドプローブを用いた検討では、捕捉反応における温度、時間、プローブ量、全ターゲットDNA中の標的遺伝子の存在割合等を変えて検討を進めた。いずれの場合においても、集積度と捕捉した標的遺伝子内の配列構成の変化(回収バイアス)には明確なトレードオフが存在し、回収する標的遺伝子内の配列多様性を担保した上で達成可能な集積度は数百倍程度と考えられた。一方、クローン配列から作成した長鎖1本鎖DNAプローブを用いて捕捉反応を行った検討では、数万倍程度の高い集積度が得られ、かつオリゴヌクレオチドプローブと比べて回収バイアスが小さく、長鎖1本鎖DNAプローブは捕捉プローブとして優れた特性を有することが確認された。 活性汚泥試料から抽出したDNAに対し、amoA遺伝子を標的とするオリゴヌクレオチドプローブを用いて手法を適用した。約100万リード中に数百リードのamoA遺伝子と相同性を有する配列が得られたものの、遺伝子捕捉反応の前後で明確な集積効果は観察されなかった。オリゴヌクレオチドプローブで達成可能な集積度が十分でなかったこと、技術的な問題により解読した塩基配列データのクオリティが低かったことが原因と考えられる。 環境試料への適用成功例を示すことはできなかったものの、手法における一連の操作の条件を十分に検証し、特に長鎖1本鎖DNAプローブの有用性を明確に見出すことができたことから、本研究課題で提案し開発を進めた手法の限界と可能性に関して有用な知見を得ることができた。
|