昨年度までの検討において、試験中に分離対象とする試料(大腸菌懸濁液)と回収液(0.1Mマンニトール溶液)の送液を切り替える際に、送液の流速が安定しないことにより電極中の菌が剥離する問題がしばしば観察された.そのため、連続送液を行いながら溶液の切り替えができるよう3方コックによる流路切り替え装置を作成した。作成した装置を用いたところ、送液切り替え時の菌の剥離を大幅に軽減することができた。 次に、土壌懸濁液試料における菌体の分離試験を行った。試料には、土壌粒子を多く含んでいる嫌気ベンゼン分解集積培養系を用いた。試料に大腸菌を添加し、土壌粒子と大腸菌の分離を試みた。重力沈降により分離できる粒子を取り除いたのちに懸濁している部分を採取し、昨年度までの検討において、大腸菌の捕捉に適した条件の範囲を設定して試験を行った。土壌粒子と菌体を明確に見分けることができる蛍光染色の方法も検討し、SYBR Green Iが優れていたため、以後SYBR Green Iを用いた。 大腸菌のみを流下した場合に明確な菌体の捕捉が見られた条件においても、土壌と混合した場合には保持された大腸菌は少なかった。したがって、土壌粒子懸濁液中の大腸菌は、大腸菌培養液中とは異なる誘電泳動特性を持つことが明らかとなった。このことから、土壌粒子懸濁液における誘電泳動条件を再度検討した。印加する電圧を10Vppから20Vppに上昇させたところ、より多くの粒子を捕捉することが可能となった。このことは、Alcaligenes faecalisを用いた場合にも同様の結果が得られ、他の種の菌でも確認された。A.faecalisを用いた場合、土壌スラリーからの回収率は9%であった。
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