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2013 年度 実施状況報告書

ポリ塩化ビフェニルの代謝効率向上を目指したP450酵素変異体の創製と局在性改変

研究課題

研究課題/領域番号 25550064
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関神戸大学

研究代表者

乾 秀之  神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90314509)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード水質汚濁・土壌汚染防止・ 浄化
研究概要

(1)CB118を代謝するP450分子種の同定と代謝物の構造決定
土壌、底質、生物を広く汚染しているポリ塩化ビフェニル(PCB)の一種CB118(2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl)はラットCYP1A1により2種の水酸化代謝物4-hydroxy-2,3,3',4',5-pentachlorobiphenylと5-hydroxy-2,3',4,4'-tetrachlorobiphenylに、ラットCYP2B1により3-hydroxy-2,3',4,4',5-pentachlorobiphenylに、ヒトCYP2B6により3-hydroxy-2,3',4,4',5-pentachlorobiphenylと5-hydroxy-2,3',4,4'-tetrachlorobiphenylに代謝された。代謝活性はラットCYP2B1、ラットCYP1A1、ヒトCYP2B6の順に高くなった。
(2)P450分子種のホモロジーモデリングとPCBとのドッキングモデルの構築
ラットCYP1A1、ラットCYP2B1並びにヒトCYP2B6の3次元構造を分子モデリングにより構築し、これらとCB118とのドッキングモデルを構築した。P450の活性中心であるヘム鉄と基質結合ポケットに結合したCB118との距離を推測したところ、代謝可能な5Å以内に配座するCB118はヒトCYP2B6にのみ見られた。これがヒトCYP2B6においてラットCYP2B1より代謝活性が高かった理由と考えられる。さらに、ラットCYP1A1は主に4位を水酸化したのに対し、ラットとヒトのCYP2Bサブファミリーは3位を水酸化した。これはCYP2Bサブファミリーの基質結合ポケットの極性が分極しているため、疎水性のCB118の3位炭素がヘム鉄に近づき、3位水酸化代謝物に代謝されたと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

(1)CB118を代謝するP450分子種の同定と代謝物の構造決定
CB118のP450による代謝について、ラットとヒトの間で代謝活性の違いが存在することを明らかにした。このことから実験動物を用いたPCBの毒性評価試験結果のヒトへの外挿について、十分に注意を払うべきであることが示唆された。
(2)P450分子種のホモロジーモデリングとPCBとのドッキングモデルの構築
P450によるPCBの代謝において見られるP450が由来する動物種の差、P450分子種どうしの差は、P450の基質結合ポケットへのPCBのドッキングの仕方(安定性、ヘム鉄への近づきやすさ、基質結合ポケットの極性)に由来することを明らかにした。

今後の研究の推進方策

(3)P450変異体の作製とPCB代謝試験
ラット並びにヒトCYP1A1について、PCB同族体とのドッキングモデルを構築することにより、CB126並びにCB77の代謝に重要なアミノ酸をすでに決定している。これらアミノ酸はP450の基質結合ポケットの形状・性質を変化させることにより、PCBのヘム鉄への近づきやすさ、基質結合ポケットにおける安定性の向上に寄与すると考えられる。これらアミノ酸を変異させた変異体を構築し、酵母に導入し、組換え酵素を用いてその代謝活性を測定する。
(4)P450の細胞内局在性の改変
哺乳類のP450は通常細胞内において小胞体膜上に存在している。しかし、基質となるPCBは極めて脂溶性が高いため、細胞膜にとどまり細胞質や小胞体膜に移動する量は限られている。そこで、P450をPCBが濃縮する細胞膜に局在させるため、細胞膜局在性シグナルMGCTVSTQTを、P450のN末端に存在する小胞体局在シグナルと置換する。さらに緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合し、酵母に導入する。蛍光顕微鏡下での組換え酵母におけるGFP局在の観察、細胞膜の分画により、付加したシグナル配列が機能しているか確認する。細胞膜へのP450の局在が確認された組換え酵母を用いて、PCBの代謝実験を行い、代謝効率が向上したか検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Structural Basis of Species Differences between Rat and Human CYP1A1s in Metabolism of Polychlorinated Biphenyls2014

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Inui
    • 学会等名
      e-symposium
    • 発表場所
      Osaka
    • 年月日
      20140214-20140214
    • 招待講演
  • [学会発表] Amino acid variations in mammalian cytochrome P450 monooxygenases responsible for decrease of dioxin-like toxicity of polychlorinated biphenyls2013

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Inui, Kiyoshi Yamazaki, Miku Yabu, Toshimasa Itoh, Keiko Yamamoto, Motoharu Suzuki, Yuuki Haga, Shintarou Mise, Masahiro Tsurukawa, Chisato Matsumura, Takeshi Nakano, Toshiyuki Sakaki
    • 学会等名
      33nd International Symposium on Halogenated Persistent Organic Pollutants
    • 発表場所
      Daegu, Korea
    • 年月日
      20130828-20130829
  • [学会発表] ラットおよびヒト由来シトクロムP450モノオキシゲナーゼによるCB118の代謝と3次元構造の比較2013

    • 著者名/発表者名
      見世慎太朗、羽賀雄紀、薮未来、伊藤俊将、山本恵子、鶴川正寛、松村千里、中野武、榊利之、乾秀之
    • 学会等名
      第22回環境化学討論会
    • 発表場所
      東京農工大学
    • 年月日
      20130802-20130802
  • [学会発表] Structural Basis of Species Differences between Rat and Human CYP1A1s in Metabolism of Polychlorinated Biphenyls2013

    • 著者名/発表者名
      Hideyuki Inui
    • 学会等名
      22nd Symposium on Environmental Chemistry
    • 発表場所
      東京農工大学
    • 年月日
      20130802-20130802
    • 招待講演
  • [備考] 神戸大学 遺伝子実験センター 環境遺伝子機能解析研究分野 乾グループ

    • URL

      http://www.research.kobe-u.ac.jp/rceg/doc./inui/index.html

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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