研究概要 |
(1)CB118を代謝するP450分子種の同定と代謝物の構造決定 土壌、底質、生物を広く汚染しているポリ塩化ビフェニル(PCB)の一種CB118(2,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl)はラットCYP1A1により2種の水酸化代謝物4-hydroxy-2,3,3',4',5-pentachlorobiphenylと5-hydroxy-2,3',4,4'-tetrachlorobiphenylに、ラットCYP2B1により3-hydroxy-2,3',4,4',5-pentachlorobiphenylに、ヒトCYP2B6により3-hydroxy-2,3',4,4',5-pentachlorobiphenylと5-hydroxy-2,3',4,4'-tetrachlorobiphenylに代謝された。代謝活性はラットCYP2B1、ラットCYP1A1、ヒトCYP2B6の順に高くなった。 (2)P450分子種のホモロジーモデリングとPCBとのドッキングモデルの構築 ラットCYP1A1、ラットCYP2B1並びにヒトCYP2B6の3次元構造を分子モデリングにより構築し、これらとCB118とのドッキングモデルを構築した。P450の活性中心であるヘム鉄と基質結合ポケットに結合したCB118との距離を推測したところ、代謝可能な5Å以内に配座するCB118はヒトCYP2B6にのみ見られた。これがヒトCYP2B6においてラットCYP2B1より代謝活性が高かった理由と考えられる。さらに、ラットCYP1A1は主に4位を水酸化したのに対し、ラットとヒトのCYP2Bサブファミリーは3位を水酸化した。これはCYP2Bサブファミリーの基質結合ポケットの極性が分極しているため、疎水性のCB118の3位炭素がヘム鉄に近づき、3位水酸化代謝物に代謝されたと考えられる。
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