研究課題/領域番号 |
25550068
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池 道彦 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222856)
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研究分担者 |
惣田 訓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322176)
黒田 真史 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20511786)
大石 佑治 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20571558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 熱電素子 / テルル / セレン / ビスマス / バイオプロダクション |
研究実績の概要 |
熱電材料として利用されるテルル系化合物半導体の生物合成の手がかりとすべく、同族元素であるセレンを用い、セレン化ビスマス(Bi2Se3)の生物合成を試みた。まず、亜テルル酸還元細菌であるStenotrophomonas maltophilia TI-1、Ochrobactrum anthropi TI-2、TI-3について、亜セレン酸ナトリウムを含むTSB培地で好気的に培養することで、亜セレン酸還元能力を調べた。対照として、亜セレン酸還元細菌であるPseudomonas stutzeri NT-I、Pseudomonas aeruginosa RBを同様の実験系で培養し比較した。その結果、全ての菌株において24時間以内に水相から亜セレン酸が除去され、固相に移行した。このことから、TI-1、TI-2、及びTI-3株は、これまでに最もセレン代謝活性が高いとされてきたNT-I株と同様の高い亜セレン酸還元速度を持つことが示唆された。続いて、これら5菌株を、亜セレン酸ナトリウムとニトリロ三酢酸によりキレート化した塩化ビスマスを含むTSB培地で好気的に培養することでBi2Se3合成を試みた。その結果、全ての菌株で48時間以内にほぼ全量のSeとBiが液相から除去され、固相へと移行した。培養開始48時間後の培養液から得られた粒子をTEM-EDX分析に供したところ、S. maltophilia TI-1では細胞内に粒形約10 nmの粒子を、それ以外の細菌においては細胞外に粒形約30-50 nmの粒子を形成していた。これらの元素分析を行ったところ、いずれの菌株においてもBi2Se3の化学量論比であるSe/Bi=1.5に近い値でSeとBiが検出されたことから、これら微生物が形成した粒子はBi2Se3である可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに報告がないセレン化ビスマスの生物合成に成功しており、極めて高い成果を挙げているものと言えるため。
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今後の研究の推進方策 |
セレン化ビスマスの生物合成について、合成に及ぼすセレン濃度・ビスマス濃度の影響や、培養期間中で最も純度の高い粒子が得られるタイミングの探索などの特徴付けを進める。また、最適条件において合成したセレン化ビスマスを精製し、その熱電特性や材料特性を明らかにする。一方、高いセレン代謝能力を示す菌株のいずれを用いた場合でもセレン化ビスマス合成に成功したことから、高いテルル代謝能力を示す菌株を取得することができれば、テルル系化合物半導体の生物合成に成功する可能性が推測される。従って、引き続き高活性テルル代謝細菌の単離を進め、それらを利用することでテルル化ビスマスの合成を試みる。
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