本研究では、環境中のpH に応答して、運動のon-off のスイッチング機能を有し、レアアースの抽出・分離を自律的に行う自己駆動型液滴の創成を目的とした。指向性を持って移動する液滴の化学走性機能の発現のメカニズムを解明することにより稼働率の向上を目指し、目的物質であるレアアースの抽出・分離能力を定量的に求めることにより、機能発現の向上を図ることが本研究で解決すべき課題である。指向性が生じるメカニズムを解明するために、ターゲット物質の存在下における、pH 応答型自走液滴の運動挙動の変化を実験的に検証し、高機能化を目指して液滴自身に取り込まれたターゲット物質であるレアアースの定量分析を行った。 界面活性剤であるDEHPAを含む自己駆動型液滴に対して、4種類のレアアースを用いて検証を行った結果、ジスプロシウムに高い指向性を示すことが分かった。走化性指標が90%以上という非常に高い値を示したジスプロシウムはDEHPAとの反応性が中程度であることがわかった。同様に4種類のアルカリ土類金属を用いて実験を行ったところ、DEHPAとの反応性が中程度であるストロンチウムやバリウムが高い化学誘引物質性を示すことが分かった。平衡および非平衡時における各界面の界面張力の測定を実測することにより、ターゲット物質によるMarangoni応力の低下を誘発することによって、非対称性流れ場が発生することが指向性の主因であることがわかった。レアアースが局在化しているターゲットに到達した自己駆動型液滴の内部を調べると、ジスプロシウムが抽出されていることが分かった。 本手法により、自律的に目標地点にたどり着き、ターゲット分子を回収するソフトマターを開発することに成功した。
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