研究課題/領域番号 |
25550070
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木村 邦生 岡山大学, その他の研究科, 教授 (40274013)
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研究分担者 |
山崎 慎一 岡山大学, その他の研究科, 准教授 (40397873)
内田 哲也 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90284083)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ポリエチレンテレフタレート / アラミド / リサイクル / 重合相変化 / 高性能高分子 / 高分子結晶 / ケブラー |
研究概要 |
回収ポリエチレンテレフタレート (PET)樹脂を原料として高性能アラミドを調製することが出来れば、新しいプラスチックの再資源化方法の開発が可能になる。そこで、本研究では、重合相変化を利用したPETとp-フェニレンジアミン (PPDA)とのエステル‐アミド交換反応によるポリ(p-フェニレンテレフタルアミド) (PPTA)の調製を検討した。 重合管にPETならびにジベンジルトルエン混合物を仕込み、窒素雰囲気下で反応温度まで昇温した。PETが溶解した後、p-フェニレンジアミン (PPDA)を添加し、静置下で所定時間反応した。エステル結合に対してアミノ基が等量になるように (PPDA)を仕込み、PPTAの調製を行った。析出したポリマー板状結晶の収率とアミド結合交換率(χ)の経時的変化を調べたところ、反応時間の増加とともに収率とχPPTAが増加しており、反応開始から12時間ではχ値が約90 mo%に達した。このことから液相内で交換反応により生じたアミド結合を含むオリゴマーがPETよりも相溶性が低いために析出し、結晶を生成していることが分かった。PETのエステル結合に対してアミノ基が1.3-2倍になるようにPPDAを添加してポリマーの調製を行ったところ、PPTAが高結晶性板状晶として定量的に得られた。重合度は35-43であり、PPDA過剰系においてもオリゴマーの結晶化と同時に重合化進行するために高分子量体が生成することが分かった。重合温度が副生するエチレングリコールの沸点以上であるためにエチレングリコールは重合から効率的に回収できることも確認できた。 以上より、重合過程に結晶化を誘起する不均一重合系において、PETに対してPPDAを過剰に添加した条件下では、反応初期の液相内でのエステルーアミド交換反応が効率的に進行することで、アミド成分を多く含んだオリゴマー結晶が生成し、PPTAが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の当初計画では、以下に示すようにPETからのケブラーの調製条件の検討と生成物の評価を最重点とした。 課題1. 1,4-フェニレンジアミンを用いたアラミドの調製(ケブラーの調製) (1) 重合条件(溶媒種,濃度,温度,添加時間,添加温度など)とアラミド分子量との関係の解明、(2) 重合条件とアラミド結晶の高次構造との関係の解明、(3) アラミド結晶の結晶構造と分子鎖配向の検討、(4) 調製したアラミドの基本特性の評価(耐熱性,力学特性,化学安定性など)、(5) エチレングリコールの回収 課題2. 他種ジアミンを用いたアラミドの調製 現時点では、PPTAの調製条件を見出すことができ、結晶構造の解析も実施済みである。更には、エチレングリコールの回収の可能性も確認できた。課題2の他種ジアミンを用いたアラミドの調製に関しては、PPTAで得られた知見を基に研究を開始している。 以上より、区分(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に獲得した知見を基に平成26年度は以下の研究を展開する。 1.PETを原料としたPPTA以外のアラミド調製:PPDA以外の芳香族ジアミンを用いたPETからのアラミドの調製 2.PET以外のポリエステル樹脂を原料としたアラミドの調製:ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを原料としたPPTAの調製、アラミドのエコ調製法の確立 3.PETを原料としたポリベンズイミダゾールへの展開:芳香族ジアミンの代りに芳香族テトラミン(テトラアミノベンゼン、4,4-ジアミノベンジジン)を利用したポリベンズイミダゾールの調製と評価 4.新しいリサイクル法としての提案:グリコールの回収効率を含めた、ケミカルリサイクル方法としての技術評価
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