研究課題/領域番号 |
25550078
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小野 智司 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (90363605)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 2次元コード / 歪み補正 / QRコード / 補助パターン / 画像処理 / DPマッチング |
研究概要 |
本研究では,歪んだ2次元コードを復号する方式の開発および装置の試作を行う.本研究で提案する方式は,2次元コードの歪み具合の3次元形状を取得することで,各モジュールの位置を正確に推定する. 本年度は,(a)拡張プロジェクタカメラシステムの開発,(b) 位置検出パターン探索方式の開発,(c) モジュール位置推定方式の開発,および(d) ゴミ袋に貼付された2次元コードを用いた評価実験に取り組んだ. (a)については,3次元形状を安価に取得できる装置として普及が進むMicrosoft Kinectを2台組み合わせて3次元形状を取得するシステムを開発した.(b)については,まず位置検出パターンによらずに2次元コードの位置を推定し,続いて位置検出パターンの位置を推定する方式の開発に取り組んだ.(c)については,補助線を用いた2次元コードに対して,各補助線の認識結果に対する信頼度を算出し,信頼できる認識結果をもとにより信頼度の低い補助線認識結果を補正する方式を開発した. 上記(c)の方式を(d)の実験において評価した. (b)についての成果は人工知能学会誌に解説論文として掲載され,(c),(d)についての成果は電子情報通信学会パターン認識とメディア理解研究会で成果を発表した. また,2014年の国際会議(Int'l Conf. Pattern Recognition)に採択され,口頭発表を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における最終目標は,歪みが少ない比較的フラットな領域が50%程度見えており,自己遮蔽領域が全体の10%程度であれば2次元コードを復元できることを示すことである. 今年度は特に,画像情報をもとに2次元コードの歪みを補正して復号を行う方式において性能改善を実現することができた. これは,信頼度をもとに補助線の交点IDの推定精度を向上させる方式の実現による. 本研究で復号の対象とする2次元コードは局所的に激しい歪みを有するために,2次元コード上に生じた陰影や自己遮蔽により補助パターンの認識が困難な状況が発生する.本方式は,補助パターンの認識結果に基づく信頼度を補助パターンごとに算出し,信頼度の低い補助パターンの識別結果を,信頼度の高い補助パターンの識別結果により補正する. 本補正の方式の実現により,従来は復号が困難なほど激しく歪みが生じた2次元コードであっても正しく復元できることを確認した.また,複数 のカメラにより2次元コードを撮影するなどした場合に,断片的に得られた認識結果を統合することで,復号性能を向上できることを確認した. 一方で,3次元形状をもとにモジュール位置を推定する方式の開発は遅れている.今年度は,2台のkinectを用いた3次元形状取得システムを構築した. 2次元コードは白黒2値のモジュールから構成されるため,通常のプロジェクタカメラシステムにおいて,黒色のモジュール領域の3次元形状取得に失敗することがある.本システムを利用することで,2次元コードの3次元形状を取得できることを確認している. また,2台のkinectを用いることで,撮影角度が大きく異なる2箇所からの3次元計測を実現した. 次年度に開発する3次元形状を考慮した復号技術と組み合わせることで,歪みと自己遮蔽により頑健な復号方式の実現を可能とする.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,下記の3点について取り組む (c) モジュール位置推定方式の開発:モジュールの認識を行う際に,距離(depth)情報を用いて行う方式を提案する.距離情報をもとに歪みを補正して平面上に変形を行うアプローチと,歪みを補正せずにモジュールの認識を行うアプローチとを検討する. (e) 小型物体を対象とした計測装置の試作:2次元コードのサイズが1辺20mm程度の,搭乗券などのチケットに印刷された2次元コードを対象とした3次元形状計測装置を試作する.既存の小型プロジェクタのレンズを変更するなどして,近距離で測定が可能な装置の製作を業者に依頼する.本研究では小型プロジェクタを用いて投影パターンの試行錯誤を行うが,投影パターンが決定すれば簡単な光源とスリットを用いれば投光が可能であるため,将来は10cm四方程度の小型かつ安価な装置として実現が可能である. (f) チケット等に印刷されたサイズの2次元コードを用いた評価実験:一辺のサイズが20mm程度の2次元コードを用いて評価実験を行う. ゴミ袋に貼付された2次元コードと同様,歪みの度合いやカメラ間の角度が復号成功率にどの程度影響するかを調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度中に発表を予定していた国際会議に論文が受理されなかったたため,海外出張旅費を平成26年度に使用することとした. 平成26年度は,研究計画(f)チケット等に印刷されたサイズの2次元コードを用いた評価実験を行うため,小型プロジェクタカメラシステムの構築,開発を行う. また,研究成果を国際会議(ICPR)で発表するため,海外出張旅費を計上する.その他,研究成果を発表するための英文校正料,国内旅費,実験補助アルバイト料などを計上する.
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