研究課題/領域番号 |
25550082
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
依田 憲 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (10378606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 受動的音響観測 / 船舶騒音 / 鯨類 / 保全 / 分布 / 季節変化 / ポイントトランセクト / ライントランセクト |
研究概要 |
2013年6月(春季)および8月(夏季)に各々9日間をかけて、伊勢湾(約1465km2)、三河湾(約533km2)および外洋域(約933km2)の各海域を均等にカバーするよう曳航式受動的音響観測調査を実施した。音響記録計二機を調査船後方75m, 100mで曳航した。同時に、調査船に搭載されている魚群探知機から本種の主要餌生物の一である魚類を検出した。また、船舶の航行、護岸化の程度、建設工事、掘削工事、マリンスポーツ等の人為的活動の分布位置についても記録をし、夏季調査においてはスナメリの目視観察調査をおこなった。さらにスナメリが検出された海域の水温および水深を調べ、ArcGIS(Esri社)を用いてスナメリ分布、魚類の分布とともに解析した。 二回の調査で伊勢湾691km、三河湾358km、外洋域341kmを調査し、スナメリを各々82頭、193頭、0頭の計276頭検出した(6月139頭、8月137頭)。いずれの調査時も三河湾の湾口部で密度が高く、三河湾の湾奥および伊勢湾中央部では生息密度が低かった。分布水深は 0~40mであり、うち10-20mが69%を占めた。6月において、中層魚、底層魚およびシラスは、外洋域を含む調査域のほぼ全域で確認され、調査水域に対して検出水域は50%以上の割合を占めた。 2013年8月に片名漁港周辺海域で音響記録計A-tag二機を用いて定点観測を実施し、人工騒音源の受信音圧を計測し、音源までの距離を推定した。同時距離計を用いて音源までの距離を計測し、推定距離のキャリブレーションを実施した。さらに、2013年10月4日より音響観測定点を二点設置した。一つは日間賀島北東の比較的静かな定点であり、もう一つは日間賀島南西でフェリー航路に近く、騒音レベルが高いと考えられる定点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の約80%を実施できた。解析項目が多いため、記録を行った船舶の航行、護岸化の程度、建設工事、掘削工事、マリンスポーツ等の人為的活動の分布位置とスナメリ分布位置の比較が実施できていない。今後早急に解析を進める方針である。当初、夏季(9月予定)および冬季(2月予定)に調査を実施する予定であったが、冬季は海況が悪く調査の実施が不確かなため春季と夏季に調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も伊勢湾、三河湾、外洋域の全域を対象とした曳航式受動的音響観測調査を実施し、スナメリ鳴音と人工騒音の録音をおこなう。外洋域は対象面積が大きいため、別途追加で曳航式受動的音響観測調査を実施する。平成25年度に実施した調査結果とあわせ、スナメリ分布の季節性、経年変化を精査する。複数の音響記録計に記録される同一の音波を用いて、調査船からスナメリまでの距離を推定し、検出確率を算出する。さらに、対象水域面積、調査面積、検出個体数、検出確率から水域毎の生息密度、全個体数(地域個体群の資源量)を算出に試みる。 さらに、秋季(10月頃)より日間賀島北東および南西で定点式受動的音響観測調査を実施し、人工騒音の大小とスナメリの海域利用を比較する。 ArcGIS(ERSI社製)を用いてスナメリ、人工騒音、全ての環境パラメータを組み込んで可視化する。モデリングをおこない、分布の規定要因を解明するとともに人工騒音の潜在的影響を評価する。各騒音が影響を及ぼしうる範囲を算出し、スナメリと人間活動の安全距離を推定する。水域ごと、季節ごとに、どの人間活動がどの程度影響を与えているかをまとめる。漁業や工事の規制が必要か否か、スナメリウォッチングが実施可能かどうか等、個体群の絶滅危険度に応じて検討し、保全管理の指針を提言する。
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